いま、東北野球の何が“アツい”の!?
高校野球103年の歴史のなかで東北勢は12度(春3、夏9)の決勝進出があるが、優勝はまだない。全国制覇を果たしていない地区は東北だけで、どの高校が優勝旗をつかみ「白河の関」を超えるかが注目されている。その期待度と、本気度が東北の強さの要因になっているのだ。5つのキーワードで検証してみよう。Point1|夏の甲子園大会では過去11年連続ベスト8入り!
「どこが全国優勝してもおかしくないところまで来ている。呪縛が解かれた瞬間、連続優勝、複数回優勝もあると思います」と話すのは仙台育英高・須江航監督だ。過去の夏の甲子園大会の上位校を見ると11年連続8強入り、準優勝3度、4強3度。あと一歩という期待度が年々増している。そんななか、昨年の聖光学院高校のように優勝候補と言われながら初戦敗退(春は東海大相模高校、夏は報徳学園高校)に泣くことがあり「クジ運も大事」の声も。関東・近畿勢への攻略が監督たちの命題となっている。過去11年のベスト8入りした東北勢の高校一覧
第90回 聖光学院高校(ベスト8)第91回 花巻東高校(ベスト4)
第92回 聖光学院高校(ベスト8)
第93回 八戸学院光星高校(準優勝)
第94回 八戸学院光星高校(準優勝)
第95回 花巻東高校(ベスト4)、日大山形高校(ベスト4)
第96回 八戸学院光星高校(ベスト8)、聖光学院高校(ベスト8)
第97回 仙台育英高校(準優勝)、秋田商高校(ベスト8)
第98回 聖光学院高校(ベスト8)
第99回 盛岡大学附属高校(ベスト8)、仙台育英高校(ベスト8)
第100回 金足農業高校(準優勝)
Point2|野球を底辺から支える普及活動が盛ん!
ここ10年で6県▲19%、約1万3000人の高校球児が減少している東北。「野球の未来」を真剣に考える活動も盛んだ。宮城では2018年に「宮城県高野連普及振興委員会」発足。選手の野球検診や、園児・小学生のTボール教室など普及活動を行っている。委員長の石巻工高・利根川直弥監督は「北海道は日ハムと上手く連携しており、楽天のある宮城としても学ぶ点が多い」と話し、17年続く石巻市アマチュアチーム全選手が参加の「野球フェスティバル」も継続していく姿勢を見せている。Point3|監督同士、仲がいい!
「東北の監督はみんな仲が良い!」と言われている。練習試合はもちろん、東北大会で顔を合わせると「同窓会」のような雰囲気になるそうだ。盛岡大附の関口清治監督は「佐々木監督(学法石川)、斉藤監督(聖光学院)、佐々木洋監督(花巻東)らと東北大会前に決起会をしたこともあります。東北福祉大出身の監督のつながりは特に深くて、光星の仲井監督とは公式戦の前夜も食事をする仲ですよ。認め合い『負けられない』という気持ちが相乗効果となり、東北を強くしているのでしょう」。Point4|万全のコンディションを作る医療チームが充実!
野球検診も盛んだ。宮城では整形外科医とPT(理学療法士)が「NPO法人スポーツ医科学ネットワーク」を立ち上げ、県高野連からの要請を受けてエコー検査、可動域測定、ストレッチ指導を行っている。「早期発見と予防喚起はもちろんですが、医学系の学生が『ケガ予防に携わりたい』と活動に参加してくれることもうれしい」と永元英明理事長。山形も「県野球活性化推進会議」が高野連、医師、マスコミと連携して野球検診を実施しており、東北は野球=医療の連携が熱い。Point5|マリナーズ菊池雄星も誕生!スーパースターたちの存在!
今年、岩手から大谷翔平に続く2人目のメジャーリーガー、菊池雄星が誕生した。花巻東高時代から甲子園スターとして人気を博した両選手。地元の野球少年たちの憧れであることは間違いない。そして今年の目玉が大船渡高・佐々木朗希投手(2年)である。昨秋の岩手大会で最速157キロを記録しドラフト上位確実と言われている。公立の怪腕を見るため岩手を訪れるファンが急増しそうだ。(取材:樫本ゆき/写真:松橋隆樹、樫本ゆき)
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