日本一を獲ることしか考えていません
投球論が核心に迫ってきた。具体的なテクニックについて聞いていくと、森下はますます饒舌になった。「打者が1巡したところで、だいたい傾向がわかってきます。基本的に真っすぐを狙われることが多いので、カットボールのような速い変化だとちょうどよく引っ張られてしまう可能性があります。そんな時はカーブでタイミングをずらせば、簡単にストライクがもらえます。スライダーを待たれていると感じた時は、変化球のなかでもっとも速いカットボールを投げれば、凡打になりやすいです」
森下は打者の様子を観察して、狙い球を察知するという。そんな話の流れから、「もしかしてネクストバッターズサークルの様子も観察していますか?」と聞くと、森下は「はい」と即答した。
「バッターがネクストで素振りする位置は、その選手の一番好きなコースですから。無意識で振ってるバッターも多いので、その裏をかけば簡単にカウントが取れます。ただ、なかにはこちらの裏をかくように素振りをする頭のいいバッターもいるので、注意が必要ですけど」
森下の投手としての真髄に触れた気がして、ゾクゾクした。この「ネクストでの観察」を今まで取材時に聞かれたことはあるかと問うと、森下は苦笑しながら「何回かあります」と答えた。野球の本場・近畿地区は、記者までハイレベルだと痛感した。
最後に今夏について尋ねると、森下はこう答えた。
「投げる試合は全部完封して、打ってはチャンスで一本出すこと。日本一を獲ることしか考えていません」
高校最後の大会を万全の態勢で迎えられたわけではない。それでも、森下の類まれな思考力と洞察力をもってすれば……。森下瑠大にとって真価が問われる夏がやってきた。(取材・文・写真:菊地高弘)
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