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公立の進学校が全国王者に大善戦!その陰にラプソードあり!川和高校元監督 伊豆原真人 ×元エース 吉田悠平(前編)

2023.12.18

カットとフォークでセンバツ王者に好投



――その3年の夏には、4回戦でセンバツ王者の東海大相模と戦い、8回まで1対1の熱戦を展開。9回に勝ち越し点を許すも、見事なピッチングでした。投球の大半がカットボールだったそうですが、どんな狙いがあったのでしょうか。

吉田 あの試合は、フォーシームを4球しか投げていません。あとはカットボールが9割で、フォークが1割程度。東海大相模を抑えるには、これしかないと思っていました。カットボールは、2つ上の先輩から「私学を抑えるにはカットボールが有効」と教わり、夏の大会前には自分のモノにできました。

――かなり極端な配球だったのですね。

吉田 それができたのも、ラプソードで各球種の変化量を知ることができたからです。カットボールとフォークのどちらも、変化量を示す十字の座標のほぼ中心にありました。これは、バッターの視点では、「球種は違うけど同じ球に見えている」と推測することができます。錯覚を起こさせるために、2球種を中心に組み立てていました。

――フォーシームを組み合わせれば、カットボールとフォークがもっと生きそうな感じがしますが。

吉田 それも練習試合でやったのですが、強豪私学になると、僕くらいの140km/h弱のストレートなら簡単に対応してきます。ストレートを待っていなくても、反応で打ててしまう。だから、あえて投げる割合を減らしました。

伊豆原 東海大相模の打線になると、配球で抑えるのは難しいと思っていました。カットボールをストライクゾーンの中に投げ込み、打ち損じの確率を増やしていく。どんどん振ってくるチームなので、そのうえで抑えるしかありません。吉田のカットボールは速いのと遅いのがあり、初見ではなかなか対応できない球種です。

――理想的なスピードの目安はあったのでしょうか。

吉田 フォークが110km/h前後で、遅いカットボールが122km/hから124km/h、速いカットボールが127km/h前後です。状態の良し悪しをはかる目安になっていました。

――変化球でも、リリースアングルはチェックしていたのでしょうか。

吉田 していました。カットボールは0度で、フォークがプラス3度です。

――フォークは少し上に投げ上げている?

吉田 はい、フォークは高めからストライクゾーンに落とすイメージで投げていたので、プラスのリリースアングルになっていました。あとは、ラプソードではリリースの左右の角度を示す「ホライゾンタルアングル」という数値もあり、これも参考にしていました。

――東海大相模戦で、「いける!」という手応えを掴んだ場面はありますか。

吉田 初回の先頭打者です。大塚瑠晏選手(現・東海大/左打者)に初球のカットボールをセンター前に打たれたのですが、インコースに食い込むカットボールにグシャッと詰まった当たりでした。自分がイメージしていた感覚と、相手打者の反応が近いところにあり、「これならいけるかも」と思いました。

吉田悠平
182cm 72kg、右投右打。神奈川県中原区出身。横浜緑リトルシニアから川和高校へ進み、現在は早稲田大学スポーツ科 学部に在籍。準硬式野球部に所属し、ポジションは投手/外野手。

2021.7.20 川和VS東海大相模激闘をプレーバック

9回を迎えるまでのスコアは1-1。川和のエース吉田悠平は、この日のために磨いてきたカットボールを武器に、強打の東海大相模打線を翻弄。2回に許した百瀬和真のソロホームランの1点のみに抑えていた。
「ひょっとしたら……」多くの高校野球ファンの頭に川和の大金星がよぎった。だが当時、神奈川県内の公式戦を43連勝していた全国王者の壁は厚かった。
東海大相模は7回からエース石田隼都をマウンドへ送ると、石田は試合展開に焦りをみせることなく、圧巻の投球とマウンドさばきで川和への試合の流れを裁ち切り、9回の攻撃へと続く流れを作り出した。好投の吉田も9回に東海大相模打線に捕まり、一気に6点を奪われ試合の行方が決まった。
だが攻撃面でも10安打を放つなど善戦を見せた川和の戦いぶりは、「これと決めて攻めてくるチームには強みがある。あれは勉強になった」と敵将・門馬敬治監督をもうならせた。

対談後編に続きます)

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取材・文=大利 実  写真=花田裕次郎 取材協力:早稲田大学準硬式野球部

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