企画

メンタルコーチに聞く、困難な状況にある子ども達との接し方

2020.4.3

スポーツをしている理由を思い出す

選手自身が自分の中に渦巻いている不安を話せると、つぎの「成長」に少しずつ目を向けることができます。ここで重要な点は、最初にお伝えしたとおり「無理矢理、切り替えないこと」です。中には「いまは練習したくない」という選手もいるかもしれません。

そして、すぐにこの先の大会や練習がいつ再開されるかの目処を立てることは難しいでしょう。けれど、「なぜ、スポーツをしているのか?」と自分に問いかけ、原点ともいえる理由を思い出すことはできます。スポーツをする理由は「勝つことだけ」ではないはずです。「野球が好き」「もっとうまくなりたい」「大切なチームメイトと一緒にプレーしたい」「成長を感じられることが嬉しい」。選手1人ひとりがスポーツをしている理由を思い出せる機会をつくりましょう。

いま、できることは何がある?

練習やトレーニングを継続すると決めた選手に対しては、こうした状況の中においても「成長できる要素」を一緒に探していきましょう。こうした機会においては、物事に柔軟に対応する姿勢などのメンタリティを向上させることができますし、十分な睡眠を取ること、栄養のある食事を摂ること、家でもできるトレーニングや有効なトレーニングアプリ、健康維持の方法などを伝えることも大切です。

また、重要な視点は「いま、できることは何があるだろう?」といった問いに選手と一緒に向き合うことです。

「なぜ、自分たちの代だけ...?」
「今後の大会はいつ開催されるのか?」
「また開催中止になるのではないか?」

と今後の行く末が気になることは誰にでもありえます。けれど、自分自身が変えられることは「自分」しかありません。トレーニングにしても、十分な環境を用意することはできないかもしれません。けれど、成長するために「いまできること」も必ずあります。そして、大会などの目標を立てることができない一方で「日々、どのように過ごしたいか?」といった1日ごとの目標と行動を積み重ねることはできます。

コーチ自身もセルフケアを!

指導する選手だけでなく、ご家族を支える立場の方もおおくいらっしゃるかと思います。選手のストレスに対し、効果的に対処し、感情を調整できるように、コーチご自身もセルフケア(十分な睡眠を取る、栄養のある食事をとる、適度な運動をする、自分自身の感情と向き合う、他者と対話をする、つながりを持つ、指導する理由を思い出す、できることに意識を向ける)を意識しましょう!


藤代圭一(メンタルコーチ)

(一社)スポーツリレーションシップ協会代表理事。教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案。日本女子フットサルリーグ優勝チーム、アイスホッケーU20日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けたコーチングをおこない、そのメソッドは高い評価を得ている。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん(旬報社)」「惜しい子育て(G.B.)」「サッカー大好きな子どもが勉強も好きになる本(G.B.)」がある。
  • 1
  • 2


PICK UP!

新着情報