
大型スラッガー・荘司元喜を擁して注目される東大和南。都立高ながら2021年から5年連続で西東京大会ベスト32入りするなど、強豪校にとって侮れない存在になっている。2024年秋からチームを率いる西悠介監督は、名門・早稲田実出身。高校野球指導者としては小岩、雪谷(部長)などで実績を挙げてきた。目指すのは「甲子園出場」ではなく、「甲子園で1勝」。その挑戦の内幕を西監督に語ってもらった。
――昨夏の西東京大会では5回戦で日大三に3対13のコールド負け。その後、日大三は甲子園で準優勝しました。
選手たちには「あのレベルに勝てる準備をしていこうね」と話しました。そのためには、強豪校のスピード感に慣れなければいけない。母校の早稲田実とも一昨年に練習試合をさせてもらいましたが、ほかにも國學院久我山、横浜隼人、横浜商といったチームと練習試合を組ませてもらっています。指導者同士が仲のいいチームとだけ試合をしても、ベスト16に出てくるチームには勝てません。私は抽選会でくじを引いた時、「名前負け」をするのが嫌なんです。
――荘司選手は謙虚で真面目な人柄が印象的でした。同じ都立高でも、雪谷と東大和南では選手の気質も異なるでしょうか?
全然違いますね(笑)。雪谷の選手は、向こうから貪欲に野球を求めてくる。「先生、ノック打ってください」と言ってきます。東大和南の選手たちは、ちょっと控え目ですね。でも、おっしゃるように荘司は真面目で努力家で、考える力もあります。野球ノートを読むと、自分の考えが細かい字でびっしりと書いてあります。もっと自分に自信を持っていいのに、と思うこともあるくらいです。

――練習環境は70m×100mの長方形の校庭をサッカー部と共用。平日の練習時間も約2時間と短いですね。
18時半完全下校のため、グラウンド整備の時間を考えると2時間くらいしか取れないですね。
――今日は打撃、守備、ウエートトレーニングの3班に分かれて、ローテーションで練習を回していました。
ウエートトレーニングにはこだわっています。雪谷で指導していた時、元プロ選手の伊達昌司監督(元阪神ほか)がウエートトレーニングを導入すると、野球が変わりました。その過程を見て、自分も考え方が変わりました。
――都立高だと、トレーニング環境に限りがあるのではないですか。
室内に他部と共用のウエートトレーニングスペースがあります。また、東京開催のデフリンピックで使用した器具が、お下がりとして学校に来た恩恵も受けています。
――荘司選手によると、ベンチプレス、デッドリフト、スクワットの「BIG3」を中心に鍛えているようですね。
はい。私は「ウエートトレーニング」ではなく、「BIG3の時間」と呼んでいます。せっかくウエートトレーニングの時間を設けても、筋力に自信のない子はBIG3をやらずに、アームカールのような強度の低いトレーニングに逃げてしまうんです(笑)。しっかりと取り組めば数値は高まるし、野球のパフォーマンスは上がっていきます。
――高校までウエートトレーニング未経験の選手も多いでしょうからね。
都立高は特に伸び幅が大きいと思います。根鈴雄次さんが言っていたんです。「野球は無差別級だ」と。本当にその通りだなと思います。体格の差は言い訳にできません。

――西監督のチーム強化策は、体作りに重点を置いているのでしょうか?
体作りも大事ですが、まずは目標設定から始めます。目標設定のやり方をコーチングしている知人に依頼して、選手の意識から変えていきます。高い目標が設定できれば、より高いエネルギーが生まれますから。だから私たちは「甲子園出場」が目標ではなく、「都立高で初めて甲子園で1勝を挙げる」を目標にしています。あとは視力も重視しています。
――視力ですか?
今の高校生は、視力が悪い生徒が多いです。でも、視力が高いほうが、野球はうまくなります。4月に健康診断を受けた後に選手と面談し、裸眼でいくかコンタクトレンズを入れるか話し合います。「よく見えたほうが黒板の字もよく見えるよね?」と伝えています。
――現在の部員数は選手22人、マネージャー3人の計25人。甲子園1勝を目指すチームとしては、多くはありませんね。
はい。でも、新年度は20人くらいの新入部員が入ってくれる見込みです。新2年生の中心選手も多いですし、これからが楽しみなチームですよ。(取材:菊地高弘/写真:編集部)
(取材:菊地高弘/写真:編集部)
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