トレーニング

習慣性の肩関節脱臼を克服する

2016.8.15
  術後は肩の可動域を回復させることから始める


 肩関節は複雑な動きができるようにさまざまな方向への可動性が認められますが、それは同時に肩関節の不安定性を持ち合わせています。腕を肩のレベルまで挙げ、かつ肘が曲がった状態(肩外転90°、肘屈曲90°)は関節力学的に弱い肢位(しい)とされ、このときに肩周辺部に大きな外力が加わると上腕骨が前方にずれる、いわゆる脱臼(前方脱臼)が起こります。特に一塁へのヘッドスライディングやベースへの帰塁、ボールをキャッチしようとダイビングキャッチを試みたときなどによく見られます。

 脱臼の場合、動かすだけでもかなりの痛みがあるため、痛みがひどくならないように固定をしてアイシングを行い、すぐに病院で診察を受けるようにしましょう。脱臼した部位は骨折を伴う場合がありますので、無理に脱臼を整復しようとしてはいけません(国家資格のある専門家に整復してもらうこと)。関節内の軟部組織や靱帯なども損傷していると考えられますので、受診したのち固定期間やリハビリテーションの指示を受けるようにします。

 一度肩関節の脱臼を起こすとかなり高い確率で再脱臼をするといわれており(諸説ありますが8割以上とも)、肩関節を支える組織が弱くなって関節そのものの不安定性が増すことになります。初めて脱臼したケースであれば、固定・安静とインナーマッスルと呼ばれる腱板の強化を行うようにしますが、関節のゆるみから何度も脱臼をしてしまう場合には、手術をしたほうがパフォーマンス向上により役立つと考えられます。

 習慣性の肩関節脱臼は自分ですぐに整復(肩を元のポジションに戻す)できることがその特徴としてあげられます。「肩が外れたらまた入れてしばらく安静にすればプレーできる」と思っていると、一つ一つの動作に不安感がつきまとい、全力プレーすることがむずかしくなります。初回脱臼時のリハビリテーションがかなり重要になってきますが、何度も繰り返してしまう場合は、緩んでいる関節内の組織を修復する手術を受けることが望ましいといえるでしょう。


  



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