トレーニング

元プロ野球チームの名トレーナー直伝 圧倒的にケガを少なくする身体の作り方(1)

2016.7.21

 打つ、投げる、捕る、走る、飛ぶ、止まる・・・多くの動作を必要とする野球というスポーツはケガがつきものと言われる。正しい姿勢や正しい動作で行われないと肩や肘、膝など多くのケガを抱えたままプレーする選手たちも少なくない。阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスなど、現役のプロ野球選手をはじめ、多くのトップアスリートの身体を支えてきた、くまはら接骨院の熊原稔院長に「ケガをしない身体を作る」ためにはどうしたら良いか、その謎を聞いた。

肩、肘の痛みの原因は“下半身にあり”

 まず投球動作について考えてみましょう。ここ数年、多くの高校生や中学生が「肩が痛い」「肘が痛い」と言って来院してくる選手が後を絶ちません。そのときに、ケガの専門家である私たちがまず考えなければならないのは「どうして肩や肘が痛くなったのか」ということなのです。肩や肘の痛みは投球動作の繰り返しによる「結果」であって、「原因」となるものが必ずあります。その原因は、選手の投球動作の中から見つけ出すことができるのです。そのために最初にやることは、身体の使い方をみたり、コンディションニングの方法を聞いたりして、その原因となるものを探すようにします。多くのケースでは、肩や肘の痛みの原因は該当部位ではなく、全く違うところに見つかることが多いのです。


プロ野球の新人選手でもできない“足指歩き”。ケガをなくすには足関節の機能がカギ

 以前プロ野球の球団でトレーナーをしていたときのことですが、入団してきた新人選手たちにあるテストを行いました。それは足の指だけを使って歩くというもの。10秒間で30㎝以上歩くことができれば合格ですが、これがなかなかむずかしい。何とか歩くことができても、よく見ると小指が浮いてしまって足指全体を使って歩くことができない選手がたくさんいました。なぜ、足指を使って歩くのでしょうか。それは、投球動作というのは「下から上に向けての力の連動によって行われる」からです。足指を含め足関節がしっかりと機能していないと、まずしっかりした立ち位置を保つことが出来なくなります。その状態で投球動作を行うと、足から体幹を通して腕、手指からボールに力が伝わるまでの間に力のロスが見られ、身体にゆがみが生じた結果、足ではない他の部位を痛めることにつながるのです。


投球動作の中でも、最も大切な立ち位置。下半身のばらつきが上半身のケガを生み出す


 まずは、正しい立ち位置をチェックすることが大切です。軸足に体重がしっかり乗った状態で(図1)、身体が前後左右にぶれていないか(図2)、骨盤が後傾し(後ろに傾いて落ちた状態)お尻が落ちた状態になっていないかといったことを見ます(図3)。このとき足関節に硬さがあると、この姿勢を維持することがむずかしいです。そしてこの状態は平面では維持できても、傾斜のあるマウンドに立つとさらにむずかしくなります。地面の反力を使って力を生み出す姿勢がキチンと取れていないと、投球動作にばらつきが出てきて、いわゆる身体がひらいた状態で投げてしまう。そうした結果、肩や肘に大きなストレスがかかって、痛めてしまうのです。

 さまざまな投手の投球フォームを見ますが、中でも立ち位置が正確でぶれないと感じるのは、楽天イーグルスの青山浩二投手や阪神タイガースの藤川球児投手です。ニューヨークヤンキースの田中将大投手なども立ち位置が非常によいと思います。こうした姿勢を保持するためには下半身、特に足関節の柔軟性が必要となります。足関節を柔らかくするためには、しっかりと足首を回したり、チューブを使ってトレーニングを行ったりすることが有効です。しゃがんだときに踵が浮いてしまったり、バランスを崩してしまったりするときは、壁などを支えにして繰り返ししゃがみ込む動作を行うこともよいでしょう。次回は投球フォームのチェックポイントについて解説していきたいと思います。


取材・構成:西村典子(東海大学硬式野球部アスレティックトレーナー)
監修:熊原稔

熊原実
(株)クマハラアスリートサポート代表、くまはら接骨院・院長
阪神タイガース・チームトレーナー(1992~2001年)、新庄剛志パーソナル・トレーナー(2001~2002年)、東北楽天ゴールデンイーグルス・コンディショニングディレクター(2010~2014年)等、長年にわたってプロ野球選手のトレーナーを務める。2013年にはWBC・侍ジャパン日本代表トレーナーとしても帯同。現在はトップアスリートからジュニアまで幅広い選手への治療・サポート活動を行う。日本体育協会公認アスレティックトレーナー。


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