トレーニング

盗塁数はリーグトップ。走るチームに変貌した城西大学野球部の走力トレーニングに潜入

2016.7.22



 小原沢重頼監督が語る、”走力”を活かしたチーム作り

 大学リーグに所属する城西大学野球部は春季リーグを5位で終えた。ベストナインにも2名(見目雅哉遊撃手、足達凌太郎外野手)選ばれるなど、各選手の成長も著しい。そしてデータを見てみると、チーム成績は良くなかったものの、盗塁数がリーグトップ。走るチームに変貌を遂げた城西大学はどのようにしてチーム強化を図っているのか。
 
 

 走力に力を入れる理由をプロ野球選手として巨人でも活躍した小原沢重頼監督はこう語る。
「走ることに力を入れようという発想はチーム事情によるところがありますね。走攻守、三拍子揃って特に打力もあるような選手はどうしても東京六大学や東都の大学に進学します。うちに入ってくる選手は高校時代は無名の選手が大半です。そういうチーム状況で点をとるには、走塁を強化することが必要不可欠だとチームを作っていく上で強く感じました」
 限られた予算を考慮して、よりチームカラーを打ち出していくのはどうしたらいいか。考えた末に、「走るチーム」というのに行き着いたという。

 「うちのOBで足のスペシャリストでもある代田建紀コーチ(藤嶺藤沢高校出身)に来てもらったのもそういう理由ですね。自分は投手出身ですが、投手の視点から考えても足を使ってくるチームとの対戦は嫌なんですよね。どんどん打って点をとるチームは戦い方が読めるのですが、走ってくるチームは塁上でも気にしないといけないいけないことが増えて、結果的に打者との勝負に集中できなくなる。そういう経験からも走塁の強化はかなり重要視しています」

 「今では多少非力だったり肩が弱い選手でも、積極的に声をかけるようにしています。チームにも走る意識は徹底されて徐々に結果にも繋がっていると感じていますね」とオフ期間でも走力を鍛え続けた結果、春季リーグでもチーム盗塁数一位を獲得。少しずつ結果が出始めているチームに手応えを感じている。


 盗塁のスペシャリスト・代田コーチから見る、走る城西大学の今

 

 走るチームを作る上で、トップレベルを体感しているプロ野球経験者は貴重な存在だ。
 小原沢監督率いる城西大学はヤクルトスワローズ、千葉ロッテマリーンズなどで活躍した、代田建紀氏を2015年4月よりコーチとして招聘し、走力面を徹底的に強化した。

 「自分に求められているのは走塁面の強化なのでそこは本当に意識しています。このチームで長打を打てる選手はそういませんから、とにかく次の塁を狙う意識は口酸っぱく言いますね。理想はノーアウトでランナーが出た時も簡単にバントでアウトをあげるのではなく、足を使って次の塁を奪うこと。盗塁はもちろんですし、捕手がボールを逸らした一瞬の隙も見逃さない。うちは打順に関係なく全員走らせます」
 
 また、走力だけに気を配るのではなく、「もう一つ気をつけているのは走り打ちにならないこと。速く走ろうとしても当てるだけの打撃では意味がありません。1番の足達凌太郎(3年)は去年まで完全に走り打ちでしたが、練習から強く振ることを意識させて今年は改善し、春は首位打者にまでなりました(4割3分1厘)」と打撃面での効果も語ってくれた。

 チームとしては順位こそ5位だったが、盗塁数とチーム打率はリーグトップ。走塁の意識向上が攻撃全体にもいい影響を与えていると言える。


 "スプリントコーチ”秋本氏が重視する「着地」と「姿勢」

 では、実際にどんな走力トレーニングを行なっているのか。この日はサッカーや野球など、多くのトッププロ選手、アマチュア選手を指導する”スプリントコーチ”秋本真吾氏にみっちり2時間走力トレーニングの指導を取り入れていた。

 

 城西大学を指導するのは2回目ということで、前回の様子も思い出しながら、選手たちに声かけする秋本コーチは『走る速さは単純に言うと歩幅の広さと回転数のかけ算です。ただ、単純にそれを改善しようとしても上手くいきません。特に歩幅を広げようとすると姿勢が崩れて逆効果になることが多いです。ではどうすれば良いか。重要なのは「着地」と「姿勢」です』と語る。
 
 「着地のポイントは自分の体の近くに足を接地すること。そしてその時に足全体ではなく、つま先で着くことが大事です。そしてその時の姿勢は腰が入っていなければなりません。全身を使って重いものを押す時のイメージです。そうすることで体が前傾し、腱の反射も使えるようになり、足もスムーズに前に進むようになります」
 
 プロ野球や大学、高校野球の試合で多く見受けられる一塁上を駆け抜ける瞬間に筋肉系の怪我をするシーン。「野球選手に多い走り方は、踵から最初に地面に足が接地する選手が多い印象です。そうなると、自分の身体の中心よりも前に足が接地するのでそこから身体を前に運ぶ際に、膝裏、ハムストリングスの筋肉を使って前に進もうとするので、接地時間も長くなり肉離れなどの故障につながってきます。正しい場所(力の入る場所)に足を接地することで力も入りますし、つま先の方で接地することができます。結果、回転も速くなりますし、歩幅も広がっていき、スピードが出るようになります」

 「着地」と「姿勢」。この二つのポイントをしっかり正しく行えば、誰でも簡単に走力アップが行えるという。後編は秋本コーチが指導するトレーニングを動画で見てみよう。

 



 後編へ続く



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