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【四日市工業高校】数字を重視してレギュラーを選ぶ “データ主義派”(後編)

2016.6.8



選手のスイングを測定し打撃強化をはかる

さまざまなデータを活用する理由について小野監督は自身の経験をもとにこう説明する。「自分は現役時代、レギュラーではなかったんです。最初から上手な“できる子”と違い、下手なら工夫しないといけない。そう考えたとき、数値的な根拠や、形を示されてこそ説得力が生まれる」。

過去にはハイスピードカメラを導入し、部員それぞれに打撃フォームを見せて打撃改良に役立ててきた。
さらにデータ主義を貫く小野監督は昨年の秋から、打撃スイングを数値で測定する機械も本格導入した。おかげでこれまで明確にできなかったデータ分析が可能になり、選手の間でも評判は上々。毎月、同じ条件下で月ごとに測定し、選手はもちろん指導者も成長具合を把握できるようになった。

新たな方針として打撃強化を打ち出した四日市工業高校にとって、スイングの改良と数値チェックが重要になっている。もともと、恩師・尾崎英也監督(現・いなべ総合学園高校)と同様に野球理論に定評ある小野監督。たとえば理想的なスイング軌道については、「どんなに速い投手のストレートでも、打者の手元では(重力に逆らえず)落下している。だからバットにボールが当たる瞬間は、その軌道にバットを入れるため、地面に平行なレベルスイングではなく、5~10度ほどアッパースイングになっているべき」と定義。複数ある練習法を繰り返して身体に理想的なスイングを染み込ませ、計測機で5~10度の範囲内になっているかを確認する。

 「測定を始めた昨年秋は、チームの6割ほどが(インパクトの瞬間に)ダウンスイング軌道だったのが、3月の計測では2人を除き、5~10度の合格範囲内でした」と小野監督も成果を感じている。数値の伸びが、この春の県大会での活躍に直結した選手もいた。

「今後は単にスイングのデータをとるだけでなく、データと実際の打撃成績との相関関係も分析してきたい」と小野監督の構想も広がっている。野球理論と豊富な練習、そしてデータの活用が相乗効果を生み、四日市工業高校の強さの源となっている。



データはスマートフォンで管理しているので非常に便利。練習の合間に部員同士が数値を確認しながら切磋琢磨している。

分析したデータの活用法
データ主義の四日市工業高校は、様々な角度からスイングデータを分析しているが、特に小野監督が重要視しているのが、本文でも触れたスイング軌道とスイング時間だ。もちろん、機械を導入したから打撃がよくなるわけではなく、体力強化や日々の振り込みがあってこそ。測定器で素振りの数も累計でカウントできるから、部員を3班に分け、帰宅後の素振りの数も競わせている。これにより必然的にヘッドスピードも上がってくる。また時には、悪い結果(数値)が出るようなスイングを意図的にさせることもある。正しいスイングはその逆をすればよいわけだから、身体の使い方への理解が深まる。自身の体やアウトプット(数値)を意のままに操れるようになるのが理想だ。



投手が投げたボールとバットの軌道を合わせるため、インパクトの瞬間はややアッパー気味のスイング角度が理想的だと監督は指導する。

取材日は雨天のため、部員は屋内で器具を使って筋トレに励む。




3年・二塁手 小峰寛太
打撃の数値がアップし、背番号を奪取

この春からレギュラーの座についた小峰選手。昨年の秋はランナーコーチを務めていたが、冬の間のトレーニングで「スイングの計測数値が劇的に変わった。安打が期待できるスイング軌道になった」と、小野監督に認められ、県大会では6番打者として起用された。初戦、2度の勝ち越しタイムリーを放ちチームに勝利をもたらした。
 小峰選手は「スイング時間を速くしようとトップの位置を工夫し、0.14秒台から0.13秒台に縮めました。その結果、ボールを長く見られるようになり選球眼がよくなりました。ヘッドスピードも100キロ台から120キロ台前半にアップしましたが、まだ遅いので、130キロ台に乗せたいです」と、自身の変化を実感しながら腕を磨いている。



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