学校・チーム

【四日市工業高校】数字を重視してレギュラーを選ぶ “データ主義派”(前編)

2016.6.7

三重県の実力校・四日市工業高校は、各種データを戦略的に活用し、レギュラー選考の参考にもしている。走攻守の基本成績から打撃スイングの解析値に至るまで、幅広いデータを用いてチーム強化をはかっている。

練習時に集めた各選手のデータが項目ごとに管理されているので、チーム内順位も一目瞭然。

ティー打撃は、個々の打撃の好不調をはかる大切なバロメーターなのだ。

「士魂商才」の言葉を工業高校らしくもじった「士魂匠技」が合言葉になっている。



対外試合成績をすべてデータベース化
昨年の夏に三重大会でベスト4入りするなど、県で常に上位進出する四日市工業高校には“アナライザー”なる人物がいる。アナライザーは、チームや選手個人の対外試合成績をすべてデータベース化し、打率や打点はもちろん、「OPS(出塁率と長打率の和)」などの指標も算出する。10年前に就任した小野日出士監督が、統計分析を得意とする知人に頼み、以来、最新データが指揮官のもとに次々届くのだ。

 こうしたデータはメンバー選考の際、重要な資料となる。「参考資料とはいえ、データをもとに自然とメンバーも決まっていくし、選考に迷ったらデータを見ます。部員の力が数字でよく表れています」と、小野監督はデータの有用性を感じている。

 数字の説得力を示すこんなエピソードがある。数年前、チームに3人いた捕手のうち誰をレギュラーに据えるか、小野監督も迷ったことがあった。各々に長所・短所があったから、参考までにエース投手に意見を聞いた。

すると、小野監督が「プレーが不格好で、背番号2を与えるのはちょっと……」と感じていた捕手の名前が挙がったのだ。意外に思った小野監督がアナライザーの知人に相談すると、「でも指名された捕手の子、捕逸(パスボール)率が3人の中で一番低いですよね」と返ってきた。縦の変化球を得意としたそのエース投手にとって、変化球を止めて後ろに逸らさない捕手こそが、もっとも投げやすかったのだろう。エース投手の“感覚”と、計算ではじき出されていたデータがピタリと一致した。

 「アナライザーは部外の人で、普段試合を見る機会は少ないんですが、データで選手像がつかめてくるようです。さらに先入観や印象などの色眼鏡で選手を見ていない、ということも言えます」。

(後編に続く)


四日市工業高校野球部・監督
小野日出士

1975年生まれ。四日市工業高校から名城大学へ進学し、大学でベンチ入りするなど、現役時代は主に内野手で活躍。卒業後に教員となり、尾崎英也監督がいなべ総合学園に異動した2006年、恩師よりバトンを受け監督に就任した。


















School Data
●監督/小野日出士 ●部長/藤原英城
●部員数/3年生26人、2年生16人、1年生20人
1922年創立の公立校。春夏通算で6度甲子園出場。2015年の夏の三重大会ではベスト4、14年はベスト8と安定した成績をおさめている。OBに星野智樹(元西武ほか)がいる。



PICK UP!

新着情報