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【二松學舎大学附属高校】秋、春と2大会続けて都大会決勝で涙をのんだ。悔しさをバネに、夏こそ雪辱を果たす

2016.5.11

昨秋の東京都大会。センバツ当確を目前にしながらも、決勝戦で敗れ準優勝に終わった。
迎えた春季大会はまたしても決勝で関東第一高校に6-10で敗戦。
雪辱を果たし、夏の甲子園出場を見据える二松学舎大学附属高校野球部を追った。

1年生から活躍している大江・今村・三口に負けじと同級生はもちろん、2年生の台頭など充実した戦力を誇る。


「プレー後の振る舞いに重点を置いた意識改革を」


チャレンジ精神が消えてしまった決勝戦

テスト週間前は、バッティングを中心と
した軽いメニューで選手たちは汗を流す。


 “清宮幸太郎”擁する早稲田実業。優勝候補筆頭に挙げられていた日大三。これらの強豪を次々と倒し、昨秋の東京都大会決勝まで勝ち上がった。しかし、関東一との決勝戦では、それまでの試合と「ベンチの空気が違っていた」と市原監督は振り返る。
「決勝戦では序盤に先制点を取り、追加点もあげましたが、選手たちは終始苦しんで試合をしていました。“勝つためにはもっと点を取らなければ、ゼロに抑えなければ”そういった空気がベンチを包み込み、いつもの試合の何倍も選手たちは疲れているようでした。結果あと2回という所で我慢しきれず、同点、逆転を許してしまったと思います」。
 大観衆が見つめる早稲田実業戦では、先制点を献上するも、9回裏に同点に追いつき、延長戦でサヨナラ勝ちを収めているのに、決勝戦では立場が逆転した。
「チャレンジ精神を持って挑めていたのに、決勝戦では試合が進むにつれ、選手たちが受け身になってしまった。敗戦の後、まずはチームの意識を変える必要があると感じました」と、浮き彫りになった課題を打ち明けた。

意識改革を行っている選手たちは無駄の
ないキビキビとした動きで行動をする。

取り組んだのは「焦らない」ための意識改革

 高校野球と、高校野球よりレベルの高い社会人野球やプロ野球の圧倒的な差は送球ミスの少なさと市原監督は言う。
「東京は人工芝ですので、天然芝のグラウンドに比べるとイレギュラーは少ない。送球ミスを減らすことがしっかりとした守りに直結するわけです。秋の決勝戦も、内野の送球ミスが失点に繋がりました。ですから、冬場は特に送球練習に時間を割いてきました。大前提としてまずは“焦らない”ということが重要です」。
 焦り対策として市原監督が講じたのが意識するポイントのスライドである。
「バッティングであれば打ちたい、打ちたいと結果を出すことばかり考えていると焦りが生まれてしまう。焦りを軽減するために、プレーよりも、プレー後の振る舞いに重点を置いて意識改革に取り組みました」。
 一生懸命取り組んだのであれば、ミスをしてしまうことを責めはしない。しかし、ミスをしてしまった後に下を向いたり、自信のない表情をすることはいけないことだ、と選手たちに厳しく言い聞かせた。
「プレー後の振る舞いに意識を向けさせられれば、プレーに臨む際のプレッシャーが軽減され、落ち着きを持てるのではないかと思ったんです。そういった意識が浸透すれば、例え相手に先制、逆転されようが、冷静に試合を進められます。そして、最後には試合をひっくり返す。夏にはそんなチームになれると私は信じています」。


バッターが打ちやすいところに投
げ込むバッティングピッチャーも高
レベルの送球技術が必要とされる。

チームメイトのバッティングを真
剣に見つめる二松學舎附ナイン。

秋の敗戦は必要な通過点最後の夏を最高の夏へ

 エース大江竜聖。女房役今村大輝、主将三口英斗に対し、市原監督は口酸っぱく「1年生の夏に出て、2年生の春に出ようが、3年生の夏に甲子園に出なければ全てなかったことになるぞ」と言っているという。
「秋の敗戦の後、彼ら3年生はショックを引きずっていませんでした。あくまで私の予想ですが、夏の甲子園を経験しているからこそ夏の良さを理解していると思うんですよ」と笑顔で市原監督は語る。
 けっして秋の敗戦が悔しくなかったわけではないだろう。しかし、名門野球部の歴史上、類を見ないほどタレントがそろった世代。彼らにとって最後の夏に笑うため、秋の敗戦は必要不可欠な通過点だったのかもしれない。
 最後の夏を、最高の夏へ。敗戦を乗り越え、一段とたくましくなった二松學舎大附ナインが東京を再び熱くする。






[戦評]8回表にそれまで好投を続けていたエース大江が関東一打線に捕まり、同点に
追いつかれる。その裏に満塁のチャンスで五番今村が見逃し三振。9回に2点を追加さ
れ、裏の攻撃で1点を返すも、最後はチャンスの場面で併殺打を打ち逆転負けを喫した。








単純に回数を重ねるのではなく、意識
を持ってスイングすることにより、強
い肉体を作りだす。選手たちの身体も
一冬を越え、一段と大きくなった。

夏に勝つために! 強化した練習法

勝負強さを身につける1000本スイングで
身体も心も鍛える

 優位な状況にもかかわらず、打たなければという焦りが生まれ、打線がうまく機能しなかった秋の決勝戦。その焦りをなくして自信に変えるべく、冬場は1日1000本スイングを目指し、バットを振り続ける。
 たとえば、相手チームの投手が予想以上の球を投げることもあれば、その日に限ってとても調子が良い場合だってある。どんな強豪校が相手であろうと、二桁得点を狙える打力を備えなければ、ここ一番の試合では勝てない。
 1000本のスイングは、ただ振り続けるのではなく手を抜かないスイングを1000本行う。身体に染み付いたスイングはいつしか自信に変わり、試合で勝負強さを発揮できるようになるのだ。





野球部・監督
市原勝人
1965年3月4日生まれ。二松學舎大附在学中の1982年にセンバツ出場。準優勝の原動力となった。日大に進学後、社会人野球を経て、1997年に母校の野球部監督に就任。今年で監督歴20周年をむかえる。


School Data
二松學舎大学附属高校(東京都)
●監督/市原勝人 ●部長/立野淳平
●部員数/3年生25人、2年生21人
1948年創立。野球部創部は1958年。過去にセンバツ5度出場。夏の甲子園には2年前の2013年。11度目の進出となった東東京大会決勝に勝利し、初出場を果たす。



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