トレーニング

健大高崎高校トレーナーに訊く、大会中の効果的なコンディショニング方法とは

2015.8.14


積極的な走塁を生かした攻撃力が持ち味の健大高崎高校。今夏も初戦を危なげなく突破し、2回戦の創成館戦は苦しみながらもベスト16進出。初の栄冠へ向けて着々と準備を続けている。今年のチームもスローガンである「機動破壊」をベースに一つでも先の塁を奪う、相手より一点でも多く点を取って勝つスタイルを見せている。そんな健大高崎高校を支える塚原謙太郎トレーナーに、夏場の水分補給や食事、トレーニングなど勝敗を左右する“大会中のコンディション作り”を聞いた。


■熱中症対策は朝晩の水500mlペットボトルを必ず摂取

——今年もやはり暑さとの戦いが試合の結果を左右しています。その中で熱中症対策はどんなことをしていますか?
塚原 熱中症対策として取り組んでいるのは、500mlの水を選手たちに毎朝と毎晩飲ませています。汗をかいて身体を冷却させるという観点ではなく、安静状態のときに筋肉の中の細胞レベルまで水分を貯蓄してほしいというのが真の狙いです。夏場は水分が身体からどうしても発散されてしまうので、少しでも身体に溜めておくために、水分補給を徹底させています。

——水分補給は飲むタイミングが非常に重要だと言われます。
塚原 そうですね。朝は散歩中に飲んだり、夜は夕食後から寝る前までに少しずつ飲ませたりしています。そのおかげで、今大会はもちろん、過去の大会なども身体がつる選手が出るということはないので、この対策は効果的だと実感しています。

——最近は経口補水液が有効活用されている話も聞きます。
塚原 昼間の練習中は経口補水液を選手たちは好んで飲んでいますね。ただ、成分上飲み過ぎるとカリウムが多くなってしまうので、クエン酸も併用して飲んでいます。朝晩は先ほど話したように水をしっかり摂っていますね。

大会中のトレーニングも重要な調整


——特に夏はピッチャーが消耗する場面が多く見受けられますが、具体的なアドバイスはしていますか?
塚原 敵は直射日光です。練習中や試合前など、外にいるときは直射日光を浴びる時間を1秒でも少なくしなさい、と伝えています。すぐに日陰に入り、エネルギーを少しでも身体に溜め込むことが大切。試合の終盤にピッチャーが崩れないためにも、日頃の暑さ対策はとても大事な部分ですね。


■球場入りは試合開始2時間前。球場に入るまでにどれだけ身体を作っていけるかがカギ

——甲子園では試合開始が早かったり、逆に遅かったりと時間調整が難しそうですね。
塚原 はい。組み合わせによって起床時間や球場入り時間も変わってくるので、そのあたりのコントロールは非常に注意しています。特に甲子園大会では球場内でのウォーミングアップもスペースが限られていてなかなかできないので、球場に入る前にどれだけ心と身体を準備できるかがカギになってきます。健大高崎高校では、宿泊先の近くの広場を利用して、8〜9割くらいまで身体を作ってから球場入りするようにしています。

特製棒(サプルバット)を使って肩甲骨周りの筋肉をほぐす運動も取り入れる


——おおまかな試合までの流れを教えてください。
塚原 例えば、13時試合開始の場合、起床時間はだいたい7時頃。朝のウォーミングアップとして、ホテルから公園まで15分ほど歩き、ストレッチ&棒体操で身体をほぐす。日頃の練習から取り入れている脳を使った”シナプソロジー”も短時間で行います。その後はシャトル打ちをしたり、ピッチャーはじわっと汗をかく程度に身体を動かしたりして、全体で1時間〜1時間15分ほどで切り上げます。球場には試合開始2時間前までに入らないといけないので、10時過ぎにはホテルを出発する感じでしょうか。第一試合の8時開始の場合、選手達は3時半頃に起きなければならないので、結構大変ですね(笑)組み合わせが決まってから、試合当日のリハーサルを兼ねその時間に起きて身体を慣れさせたりもしています。

——朝がそんなに早いとなかなか身体が起きないと思うのですが、選手たちにはどんなアドバイスをしていますか?
塚原 身体をすぐに起こそうとしすぎるとストレスがかかるので、選手たちには「100%身体が起きていなくてもいいよ」と伝えています。起床時は試合開始までまだ時間がたくさんあるので、トレーニングをしていく中で徐々に身体が起きてくればいいよ、というスタンスです。最初から100%準備してしまうともたないですし、試合でもいいパフォーマンスは発揮できませんから、そのあたりの効果的な力の入れ加減は選手にもしっかりアドバイスしています。

——食事の面はどうですか?
塚原 ホテルの食事はバイキングなので、特に制限をせずに選手が好きなだけ食べています。「あれ食えこれ食え」というのではなく、ストレスなく食べることが大切。特に夏場は内臓機能が落ちてしまう恐れがあります。内臓機能が低下すると食欲が落ちる。体力がなくなるとご飯が食べられなくなるので、「食事を食べる体力をいかに保てるか」が夏場のコンディショニング作りの上でも大事な部分だと思います。トレーナーの役割としては、普段やっていることがおろそかになっていないか、そのチェックに目を光らせている感じですかね。


■大会中は「勝つための要素を集める」ではなく「負けない要素を集めていく」ことが大切

疲労回復に最適な加圧トレーニングも導入


——3回戦以降は連戦となり、疲労回復が最も大事なキーポイントになってきますね。
塚原 連戦になってくると、身体を効率的に回復させていくことが最も重要になってきます。早く身体を回復させて、いかにエネルギーを溜め込めるか。そこに焦点を当ててコントロールしています。健大高崎では試合前日は必ず温浴施設に行って、みんなでお風呂に入っています。疲労回復はもちろんですが、選手やスタッフ全員で入ることで一体感を高め、コミュニケーションを図るいい機会になっています。また、加圧トレーニングを利用して疲労物質を除去しています。科学的根拠も大いにあるので、大会中も効果的に使用しています。特にピッチャーなんかは腕肩肘の疲労が溜まりやすいので、重宝していますね。

——お話を伺うと、大会中だから特別に何かをやる、というのではなく日頃から取り組んでいることを淡々とこなしている印象が強いですね。
塚原 選手たちにはいつも伝えているのですが、「勝つための要素を集める」のではなく「負けない要素を集めよう」ということ。負けない要素はどうやったら集められるか、と言うと、日頃の練習から実践している、水分補給であったり、食事であったり、シナプソロジーのような脳を使うトレーニングだったり、加圧トレーニングだったりを普段通りにこなせるかどうか。自分たちができることをしっかりやれば負ける確率は減っていくと思うので、「負けない要素を一つ一つ準備していきなさい」と選手たちには伝えています。


■塚原謙太郎
1974年5月4日生まれ、東京都出身。都立淵江高校~東北福祉大~日本生命。社会人で5年間プレーしたのち、トレーニングの専門学校へ入学。現在は健大高崎のトレーナーを務めている。

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