全米から選抜された高校球児が一同に会するエリアコード・ゲームズ(特別協賛:ニューバランス社)が、今月4日からロサンゼルス南郊ロングビーチで開催されている。来年のメジャーリーグのドラフト対象になる最上級生と特に優れた下級生によるクラス、再来年以降のドラフト対象になる下級生のクラスに分かれる。最上級生のクラスは9日まで、下級生のクラスは9日から11日までの日程で、即席チームを編成して実戦を行う。
メインである最上級生のクラスは全米各地のトライアウトを通った約250人が参加。出身地ごとに8チームに分かれ、6日間にわたって試合をする。スタンドにはメジャーリーグや大学のスカウトが600人も詰め掛ける。メジャーリーガーを夢見る球児にとっては、自身の力をアピールする格好の舞台である。
「地域や学校の枠を越え、優秀な選手同士でプレーしてもらうのが趣旨。最高の選手を相手に全力で戦って、スカウトに自分をアピールしてほしい」。大会運営責任者のジョーイ・マハリック氏はこう話した。
8チームはそれぞれメジャーリーグ球団の名称を冠している。それだけメジャーリーグを意識したものになっている。8チームはレンジャーズ、アスレチックス、ブルワーズ、ロイヤルズ、ホワイトソックス、ナショナルズ、レッズ、ヤンキースと分かれている。
即席チームではあるがメンバーの結束力を高めるため、ニューバランス社が参加選手全員に特製ユニフォームとスパイク、バッグ等を提供している。
エリアコード・ゲームズが誕生したのは1987年。もともとはカリフォルニア州内の小さなイベントだった。カリフォルニア州は南北に長くて広いため、メジャーリーグのスカウトが実際に見に行くには経費も時間もかかる。「ならば一カ所に集めて力を見極めよう」と始まったのだ。当初、小規模だったころ、選手のエリアコード(電話の市外局番)に従ってチームを編成したため、いまでもその名が残っている。
そこから徐々に発展し、いまでは全米規模に膨らんだ。
これまで輩出したメジャーリーガーは600人以上。カージナルス時代にナ・リーグMVPに3度輝いたエンゼルスの強打者アルバート・プホルス、昨季のナ・リーグでサイ・ヤング賞とMVPを同時受賞したドジャースの左腕クレイトン・カーショー、昨季のア・リーグMVPに選出されたエンゼルスの攻走守3拍子揃った外野手のマイク・トラウトなど、華やかな顔ぶれである。
6日、地元エンゼルスの左腕C・J・ウィルソンがゲストとして招待された。レンジャーズをFAになり2011年12月に5年総額7750万ドルの大型契約でエンゼルス入り。昨季まで5年連続2桁勝利を続け、今季も同日時点で8勝(8敗)を挙げているスター選手だ。そのウィルソンは「じつは僕はエリアコード・ゲームに出ていないんだ」と苦笑まじりに言った。「高校生の僕はそこまでの選手ではなかったんだね。でも、この大会に出たいと思う気持ちがモチベーションになって努力した。その努力がその後につながったと思う。その意味では僕にとっても大きな意味のある大会だ」と話していた。
ウィルソンは大学に進み、2001年のドラフトでレンジャーズから5巡目(全体で141人目)指名を受けて入団。05年にメジャーに昇格して主力投手になった。
この日、参加している高校生の体格を見て、うらやましくなったとウィルソンは言った。「185㌢の僕から見て、190㌢以上の選手がごろごろいる。それは素晴らしい財産だ」(ウィルソン)。「でも」と彼は続ける。「まだまだ先は長い。現状に満足することなく、自分の目標に向かって一層努力を重ねていくことが必要だ。コーチにもそういう指導をしてもらいたい」と、先輩として暖かい言葉を口にした。エリート高校球児たちにとって、まだまだ夢の途中。これからも走り続けなければならない。
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