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【中学軟式】日本一をとことん追求する ~駿台学園中・西村監督~

2015.7.30

 ここ5年間で全中に3度、春の全日本少年に1度出場している東京・駿台学園中。スピード感あふれる野球は、全国大会でも話題となり、手本にしているチームも多い。
 私立ゆえに素材豊かな選手が多いこともたしかだが、それだけでは勝ち続けられないのも事実。いかにして勝つチームを作り上げているのか、西村晴樹監督の取り組みを紹介したい。


★日本一をとことん追求する


 チームの目標は日本一。
「勝つことを目指さなければ、何の意味もない」と西村監督ははっきりと口にする。

 就任6年目。二松学舎大付高の野球部に所属し、大学卒業後は短期間ではあるがアメリカでプレーした経験を持つ。
 なぜ、日本一にこだわるのか。その理由は明確だ。

「中学時代に何をやったら日本一になれるのか。どこまでやれば日本一になれるのかをとことん追求してほしいのです」
 これは本気で日本一を目指したものだからこそ、わかること。負けたときに、「あれをやっておけばよかった」と思えるのも、中学生にとっては大事な学びとなる。とはいえ、指揮官としては最初からこれを目指しているわけではない。

「負けてから後悔していては遅いんです。私の考える『本気』とは、『負ける怖さがわかっていること』。今から、負けたときの悔しさを本気で考えられるかです」

 負けてから気づくのは、誰でもできること。負ける前に、いかに気づけるか。だからこそ、練習中から厳しい声がとび、仲間同士でもきつく言い合うことがしばしばある。チームスローガンは「周りのために真剣になれ!」だ。自分のために一生懸命になるだけでは足りない。野球はチームスポーツ。チームで戦わなければ、勝利はついてこない。


★瞬時の意思疎通が勝敗をわける


 6月に行われた全日本少年軟式野球東京大会の決勝戦。駿台学園中は春夏連続の全日本出場を狙っていたが、決勝戦で大森ホワイトスネークスに1対2で敗れ、涙をのんだ。
「負けてから気づいていては遅い」と語る西村監督だが、この試合でまさにそれを実感したシーンがあった。

 1点を追う最終回、1アウト三塁のチャンス。1ストライクからの2球目にエンドランを仕掛けたが、ファウル。その後、ショートゴロをショートが横っ飛びでつかみ、三塁ランナーがホームでアウト。同点のチャンスを逸してしまった。

 ポイントはエンドランの場面だ。バッターは打ちにいったが、じつはランナーは走っていなかった。キャッチャーのある動きを見て、自重していたのだ。
「三塁ランナーはキャッチャーの動きを感じて、スタートを切らないと決めたわけです。であれば、その意思をバッターに伝えるべきでした」
 西村監督もタイムを取ろうと一瞬迷ったが、すでにピッチャーがモーションを起こしており、間に合わなかった。結果ファウルになり、2ストライク。もし見逃していれば、1ボール1ストライクでまた違った攻め方できていただろう。

 ただ……、西村監督としてもこのような練習を徹底してやってきたわけではない。取材当日はこの都大会決勝のシーンを反省材料にしてランナー三塁からのエンドランという設定で、ランナーとバッターの意志疎通を盛んに繰り返していた。
「こういったところが、究極の技術だと思っています。短い時間のなかで意思を伝えていけるか。だから、日頃から時間の意識が大事になるわけです」


★スピードで勝つ!


 駿台学園中の試合は、テンポが速い。バッテリーが1球と1球の間に要する時間はおよそ6秒。打ち取ったあとも内野のボール回しをあえてせずに、すぐにピッチャーに返球する。
 練習のテンポも速い。「慌ててプレーしろ!」が西村監督の口癖だ。試合になれば、焦ったり、慌てるのが当たり前。練習のときに「落ち着いてやれ!」では試合の大事な場面では生きてこないと考えている。
「日頃から、どれだけスピード感を意識できるか。それが、瞬時の考えや判断力につながっていく。試合のときだけ速くやろうとしても無理だと思います」


「集合!」の声がかかったときも、全力ダッシュ! 均等に並んだ半円を作るチームが多いが、駿台学園中の円陣はギュッと凝縮。西村監督の息が選手にかかるぐらいの距離で、ミーティングが開かれる。
 西村監督の声も小さい。相手や周囲に聞かれないように、あえて小さい声でしゃべっているという。小さければ、選手も聞こうという意識が強くなる。こんなところも、西村監督のこだわりだ。
 
 日本一になるためには何が必要か――。
 監督も選手も日本一の経験はない。だからこそ、真剣に日本一を追求し、足りない部分と向き合っている。


  



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