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【星野高校】全国を知る監督が築く、新鋭校の「伝統」

2017.10.3

横浜高校や、東海大相模を破り今春の関東大会を制した浦和学院に対し、新悦校の星野が今夏の埼玉大会で見せた堂々とした戦いぶりは同大会のサプライズの一つであった。星野を率いるのは高知県の名門明徳義塾で指導歴を持つ飯野勝監督。勝利の味を知る名将が築き始めている「伝統」に迫る。


全国を知る監督が築く、新鋭校の「伝統」

関東王者を苦しめた夏の死闘

春夏合わせ通算34度の甲子園出場を誇る明徳義塾(高知)で1997年から15年間に渡りコーチとしてチームを指導してきた飯野勝監督。飯野監督が星野に就任したのは2012年。そこから約5年が経ち、今夏の埼玉大会5回戦では強豪浦和学院とベスト8の座を懸けて対戦。延長戦までもつれ込んだ死闘を飯野監督は清々しい表情で試合を振り返ってくれた。

「いきなり序盤で3点を先制できた点を含め、正直出来過ぎた展開。ただ、3点を取ったことで、相手は個の力ではなく、繋ぐ野球に変えてきました。そうなると、やはり格上の相手ですから、いつかは捉えられるのではないかと思いましたね。6回裏に四番の蛭間君に二点タイムリーを打たれ1点差。そして9回裏に同点に追いつかれ、最後は12回裏に三番の家盛君に打たれてサヨナラ負け。悔しい敗戦となりましたが、でも選手たちは本当に良く頑張ってくれました。ベスト8という記録を残すことができなかったけど、記憶に残る良い試合をしてくれましたね」。

エースの湯沢卓己(3年)は一人で169球を投げ切り、監督の長男である飯野優太(3年)は4安打を放つ大活躍。創部して間もないが、県大会ではベスト8、ベスト16に顔を出すことは珍しくなく、部は今まさに急成長を遂げている。

明徳義塾と星野の“3つの違い”

甲子園常連の明徳義塾と、星野では簡単に3つの違いがあると飯野監督は語る。それは、「経験」「数」「気持ち」だという。

「明徳義塾の選手というのは小さい頃から大舞台や、緊張感のある試合を経験したことがあり、今までボールを投げたり、バットを振ってきた数が多い。そしてなによりも『勝たなきゃいけない』と思う気持ちが違います。高知の田舎で『試合に勝ち続けて甲子園で活躍する』という強い思いを持って日々過ごしている。

ウチはどちらかというと『レギュラーになれたらいいな、試合に勝てたらいいな』と思っている選手が多いですね。その気持ちの違いが練習に表れ、試合の結果に繋がるわけです」。

しかし、星野は飯野監督の熱心な指導の成果もあり、試合に勝つことで徐々に入部してくる生徒の数も増え、選手たちの気持ちも変わり始めている。

「埼玉には私学四強(花咲徳栄・浦和学院・春日部共栄・聖望学園)の牙城があります。そこをなんとか崩しベスト4に食い込みたい。先輩たちの活躍もあり、1年生は44人入部しました。結果を自信に変え、これを浸透させていきたい。甲子園のトーナメントも同じですが、ベスト4に入りさえすれば、あとはどこが優勝してもおかしくはないですから」。

“守り切る野球“を伝統にする

飯野監督が星野で築こうとしている伝統はずばり“守り切る野球”。

「野球は例え打てなくても、守り切りさえすれば負けないスポーツ。そこが野球の楽しいところだと私は思います。0-0で試合が進み、相手チームが痺れを切らし『もう星野と戦うのは嫌だ』と思わせるようなチームを作りたいですね」。

築き上げようとしている伝統は、結果として表れつつある。夏は2回戦の大宮工戦を除き、全て延長戦を戦い抜いた。相手からしてみれば非常に戦いづらいチームであったに違いない。

だが、新チーム作りでは投打に柱となる中心選手を探している最中だと飯野監督は言う。

「チームの中心人物というのは、練習を一生懸命やるのは当たり前で、普段の生活態度もしっかりしなければいけません。そして、オンとオフが上手く使い分けられるのが理想。オフの状態ではチームを俯瞰して見ることができ、オンなら一気に集中できるような人物が一人でも多く出てきて欲しいですね」。

取材も終わりになりかけたとき、日が落ちるグラウンドで飯野監督は「埼玉は暗くなるのが早いですね?高知ならまだこの時間でも明るくて、バリバリ練習できますよ」と笑いながら言った。全国を代表するチームと、簡単に比べることはできない。しかし、星野には星野にしかできない野球があり、築ける伝統がある。先輩たちの立派な戦いを目にした後輩たちが、来夏どのようなサプライズを起こしてくれるか今から楽しみである。(取材・撮影:児島由亮)

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