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【叡明】「人間性の向上」その先に見据える甲子園、そして打倒花咲徳栄

2017.9.14

夏の甲子園は、埼玉県勢として初の優勝を花咲徳栄が飾り幕を閉じた。その花咲徳栄と同じ地区である埼玉県東部において、近年頭角を現しているのが叡明高校。二季連続で県ベスト8に進出し、プロのスカウトも注目する三上ケビン(現・3年生)を育成するなど、実力は確かなものがある。3年生が引退し、新チームが発足してから日も浅い、8月下旬のグラウンドを訪問した。


1期生が築いた確かな道しるべ

叡明高校は2015年の春、小松原から学校名を改称、男子校から男女共学に、さいたま市から越谷市に移転した。指揮する中村仁一監督は「引退した3年生が叡明1期生になります。色々と学校の仕組みが変化したことがプラスになり、近年の躍進に繋がっていると思います」と変化を口にする。

3年生の中心メンバーは、グラウンド近くの一軒家で共同生活を送り、野球に打ち込んだ。中村監督の奥さんの手料理を食べ、自主練習可能なトレーニングルームで鍛え、強豪校にも負けない肉体を作り上げた。

今夏は強豪春日部共栄との準々決勝で接戦の末に敗北。「ベスト8までは行ける自信はありました。ですが、ベスト4の壁はやはり厚い。序盤はリードしていても、追いつかれ、苦しくなってしまう。それまでの試合とは球場の雰囲気も違い、甲子園に出場経験のあるチームと比べると、経験の差や底力がまだ足りていないと感じました」と中村監督は振り返る。

終盤に点を取るか、凌ぐかで結果は左右される。だが、5回戦では昨夏ベスト4の大宮東に対し、終盤に勝ち越したことを考慮すると、県内において実力はトップレベルであることは間違いない。4番に座った三上ケビンの他にも、主将を務めた強肩強打の室賀健斗など、記念すべき叡明1期生が残した道しるべは非常に色の濃いものであった。

破壊力が次のステージに上がる鍵

同地区であり、中村監督も“目標にできるチーム”と口にする花咲徳栄。先の甲子園では岩井隆監督がテーマに掲げた『破壊力』を全国の舞台でいかんなく発揮。6試合を全て9得点以上という攻撃力で他校を圧倒した。「岩井監督もおっしゃった『破壊力』は私も追い求めるものです。ですが、そのためには強靭な肉体が必要。身体が変われば打球も、投球も変わる。3年生がウエイトトレーニングに精を出したことがチーム力に直結しました。その経験を踏まえ、新チームでは早い段階、そして継続的に身体づくりには力を入れています」。

花咲徳栄は冬場に10㎏のハンマーを振り下ろすトレーニングを導入し、ナインのパワー強化に力を注いだ。叡明ナインも、ウエイトトレーニングに加え、様々な器具を活用し、選手たちの肉体を鍛えている。「技術に関しては3年生よりも上」と中村監督も評価する今のナインに、強豪校にも負けない肉体が加わるとすれば期待は高まる。

人間性の向上なくして、技術の進歩なし

だが、新チーム発足当初は戸惑いもあった。3年生に“おんぶにだっこ”であったことが表面化してしまったからだ。約束ごとを守れない、チーム内の意思疎通がうまくいかない。そこで、目に見えるモノから揃えることを徹底した。

「鞄や靴を揃える。極々簡単なことですが、そういったことが野球では重要になる。揃えることができない選手は夏季の新人戦では起用しませんでした」。そこまで徹底する理由は、中村監督がよく口にする『人間性の向上なくして、技術の進歩なし』という信念があるからだ。技術、肉体以外の部分も鍛えなければ頂点に行くことはやはりできない。

来夏は第100回記念大会ということもあり、埼玉県は2校甲子園に出場する。叡明高校にとってはチャンスの年だ。だが、同地区の花咲徳栄、春日部共栄に勝つことができなければ、甲子園の切符を掴むことはできない。頂点に立つため……心身ともに鍛えた叡明ナインが、今年の埼玉を盛り上げてくれることを期待したい。(取材・撮影:児島由亮)

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