学校・チーム

【仙台育英】ポジティブ精神でリベンジに燃える夏

2017.7.21
明るく、元気な仙台育英野球部の選手達。
明るく、元気がモットーな仙台育英。

自主性を尊重する方針で、練習は選手たちが中心となり考え動く仙台育英。笑顔が弾けるグラウンド、課題を見つめ力を伸ばす日々。だが、明るさの裏には隠された苦悩がある。ナツタイを目前にしたチームに迫った。

全国の舞台で勝ってはいない
勝利を切望する選手たち

「せーの、ジャンプ!」。とびっきりの明るさと、笑いが絶えない写真撮影。見ているだけで元気をもらえるチーム、それが今年の仙台育英だ。中心にいるのは、2年前の甲子園準優勝エース・佐藤世那投手(オリックス)の弟・佐藤令央だ。投手・打者・ベンチウォーマーをこなす自称三刀流の底抜けに明るい選手。夏に向け、チームのムードは最高潮だと彼は言う。しかし、今に至るまでけっして順風満帆だったわけではない。

全面人工芝の「真勝園グラウンド」
全面人工芝の「真勝園グラウンド」(多賀城市)が野球部のホーム。広大な室内練習場を持ち、朝6時から自主練習の球音が響いている。

3ヵ月前、選手たちは苦しみ、悩んでいた。センバツで福井工大福井と対戦し4-6で敗戦。正捕手・尾崎をケガで欠いていたとはいえ、2点リードの終盤に逆転を許し、甲子園で8大会連続初戦突破をしていた常勝軍団が10年ぶりの初戦負け。大舞台ではわずかな隙が命取りになる。その日から選手全員で“終盤に強いチームになろう”というテーマを掲げ、再スタートした。

2階建てのクラブハウスの中
2階建てのクラブハウス。過去の栄光を伝える優勝旗や写真パネルなどが、壁一面に飾られている。

「神宮大会でも履正社に負け、僕らはまだ全国で1度も勝っていない」(斎藤)、「勝って最高の形で終わりたい。それしかない」(長谷川)、「今度出るときは、甲子園で最後まで試合をする!」(西村)。今年の選手たちは、甲子園に出るだけでは終わらない、そういった発言が非常に多い。秀光中時代、夏の全国大会優勝経験のある佐藤は「1年生の夏に甲子園準優勝をアルプスから見せてもらって、決勝に行ったら優勝をしなきゃ意味がないんだと思い知ったんです。打倒! 大阪桐蔭(センバツ優勝校)です」と話す。

ナインを鼓舞する言葉「きっと、うまくいく」

春季宮城大会・準決勝で東陵に敗れ3位に終わったとき、チームは落ち込む間もなく、すぐさま課題を見直した。敗戦後の関東遠征では日大三に10-1、桐光学園に6-2で勝利。そして直後の東北大会で優勝。チームは短期間で見事立ち直った。東北大会準決勝・東北戦では逆転で勝ち切るなど、テーマに掲げた終盤に強いチームへ変貌。だが、東北王者になっても慢心はない。グラウンド外周を全員で走る恒例の全体走では、マネージャーも参加し、夏に向け結束力を高めている。
チーム全員が思い出す言葉がある。センバツの最中、佐々木監督が1本の映画を選手たちに見せた。インドで大ヒットし、日本でも話題となった『きっとうまくいく』だ。

東北を代表する名将佐々木順一朗監督
東北を代表する名将佐々木順一朗監督。Tシャツの右袖には悲願の「全国制覇」の刺しゅうがある。

「生きていればいろんな困難がある。けれど、明るく努力していけば報われる。最後の最後にはきっと、うまくいくといった映画でした」。そう語る佐藤は、それ以来伝令のたびに「きっとうまくいく!」と声をかけ、仲間たちを鼓舞している。

選手も監督も全国制覇を“したい”と口にはしない。人生には、勝つことよりももっと大切なものがあるからだ。だけど、努力の先にあるものは……。そう、明るく、元気に野球をやれば今年の夏は「きっと、うまくいく」に違いない

「オッシャー! 夏も甲子園に行くぞ!」と意気込む選手たち。
「オッシャー! 夏も甲子園に行くぞ!」と意気込む選手たち。

チームを支える影の立役者

何でもお任せDIY係

施設の環境整備を担当する施設の環境整備を担当する係
主に施設の環境整備を担当する施設の環境整備を担当する係

チームを陰で支えるDIY(Do it your self)係の存在は大きい。仙台育英にはさまざまな役割分担があり、DIY係は主に施設の環境整備を担当する係だ。取材当日は係長の堀田(3年)と猪俣(3年)が練習の合間を見て、外野ネットの修繕を行っていた。2人はDIY係を通して「観察力がつき、気配りができるようになった」と胸を張る。グラウンドの横には裏方の選手中心で育てる家庭菜園もあり、モノを大事にする心が養われているのだ。

笑顔の激励 安藤大生マネージャー

安藤大生マネージャー
笑顔が魅力の安藤大生マネージャー

女子マネージャーがいない仙台育英。だが、安藤マネがその代わりをしっかり果たしている。「メニューをお持ちしました。何にしますか?」。来客が来るとサッと注文を取りに来る安藤マネ。中学時代は秀光中の内野手として西巻選手らと全国制覇を経験。1年秋にマネージャーとしてチームに貢献することを決めた。仲間に遅れながらも全体走にも参加。写真は3年生に贈るお守り。「ありきたりなお守りではなく、厚紙を使ってみました」とこだわり満載のお手製品!

(取材・文=樫本ゆき写真=松橋隆樹)

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School Date 仙台育英学園高校

●監督/佐々木順一朗
●部長/郷古武
●部員数/3年生38人、2年生50人、1年生31人
創立1905年。東北を代表する強豪校。野球部の主なOB は、由規投手(ヤクルト)、上林誠知選手(ソフトバンク)など。2015年夏は甲子園準優勝を経験。2017年春にも甲子園出場を果たしている。



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