学校・チーム

【日立第一】逆境乗り越えナツタイに挑む(後篇)

2017.7.17

6月1日から11日間、強化合宿に取り組んだ日立第一野球部

6月1日から11日間、日立第一は初の試みとなる強化合宿を敢行。チーム全体で過ごす時間が増えたことで、3年生に自覚が芽生えていった。チームの士気は高まり、一丸となってナツタイを迎える。


11日間の通い夏合宿

昨年の秋季大会では2回戦で敗退。今年の春季大会でも1回戦でコールド負けを喫した。チーム作りが上手くいかず、中山監督も頭を悩ませていた。そこで中山監督は師と仰ぐ方に相談。返ってきた答えは「チームメイトが一緒に過ごす時間を多く作ってみれば」という言葉であった。なぜそのことに気づかなかったのか。中山監督は目の前の扉が開けるような感覚を覚えたという。1、2日だけでなく、1週間以上ともに生活することによって見えてくるものがある。そこで中山監督は6月初旬に11日間に及ぶ合宿を行うことを決断した。

合宿中でも制服姿で朝食を食べる選手達
合宿中でも制服姿で朝食を食べる選手達
マネージャー手作りの朝食
食事はマネージャー手作り
マネージャーが腕を振るって作った牛丼
"マネージャーが腕を振るって作った牛丼。豆腐を加えたサラダなど、副菜にも気を遣う。

日立第一には合宿施設がなく宿泊は不可能。毎日朝5時55分からの早朝トレーニングと朝食の後、選手たちは授業に出る。そして、放課後に練習を行うというスケジュールを組んだ。

合宿期間中の6月3日からは茨城県北部地区のチームで行われる珂北大会に出場。試合後は再び学校に戻り練習に明け暮れた。自宅から通いながらもチーム全体で長い時間を一緒に過ごすことで、部員の絆は深まった。

朝食後に厳しいトレーニングで汗を流した選手たち。
朝食後は授業が始まる直前まで厳しいトレーニングで汗を流した。

「合宿でチームは変わった」とキャプテンの島は言い切る。特に3年生全体に「チームを盛り立てようという雰囲気が出てきた」と言う。これまで自主性が持てなかった3年生の目の輝きが変わったことこそが、この合宿の最大の成果だったと言えるだろう。

珂北大会は準優勝。収穫は大いにアリ!

毎年夏の選手権大会の約1ヵ月前に茨城県北部の学校が集まり、行われるのが珂北(かほく)大会だ。県内ではナツタイへの最終調整の場として大きな注目を集める。今年も例年通り盛り上がり、結果として昨秋と今春の茨城県王者である明秀日立が優勝した。日立第一は惜しくも決勝で敗れ、準優勝に終わる。優勝旗を逃したとはいえ「収穫の多い大会だった」と中山監督は充実した表情を見せた。

光ったのはやはり打撃力だろう。1回戦の海洋戦は11対1で快勝。2回戦も太田第一に11対3。そして準決勝は日立商業に10対0と、3試合連続のコールド勝ちで決勝戦へコマを進めた。

1、2回戦は先制されながらも、すぐさま打線が爆発し逆転に成功。「勝つ雰囲気が出てきた」と中山監督は部員たちの精神的な成長を感じたという。

そして決勝戦では茨城の高校野球をリードする存在である明秀日立に8対5の善戦。8点をリードされた展開ながらも「相手のユニフォームを見て野球をしているのか」という中山監督からの檄に目を覚ました選手たちが奮起。終盤反撃に出て、最終的には3点差にまで詰め寄った。逆転には届かなかったものの「日立第一らしい追い上げる雰囲気を出せた」と中山監督は終盤に見せた粘りを称賛した。

夏の大会まで1ヵ月に迫ったなか、選手たちが心身ともに進化していることを感じられた大会となった。

「選手の目となって指示を送りたい」

守田大成(3年)内野手兼三塁コーチ

最後の夏。3年生なら誰もが試合で活躍したいと思うだろう。だが“縁の下の力持ち”の存在なくして勝利はない。チームのために――選手としての未練を断ち切り、ランナーコーチという道を選んだ部員がいた。

PLAYER'S VOICE

守田大成(3年)内野手兼三塁コーチ

――ランナーコーチを自ら志願したとのことですが、きっかけを教えてください。

昨年の秋季大会でランナーコーチを務め、大会後にケガをして練習ができなかったんです。春から練習には復帰できたのですが、夏に向けて自分がチームのために何ができるかと考えたとき、選手としてではなく、ランナーコーチとしてチームを助けようと思い志願しました。今は練習からランナーコーチの意識を持ち、日々スキルを上げています。

――選手として未練もあったのでは?

大会でプレーしたいという気持ちはみんなが持っているはずです。でも、チームが勝つためには、そうじゃない役割を誰かが引き受けなくてはならない。ならば、自分がやろうと思いました。試合に出ても出なくてもチームのために何かをしたい。1、2年生のときは「自分のために」という思いが強かったのですが、3年生になってからは「チームのため」という思いが芽生えましたね。なので、もう未練はありません。

――ランナーコーチとしてのやりがいはありますか?

僕は三塁のランナーコーチを務めているのですが、中山監督からは「勝負を決める1点における大事なポジション」と教えられています。責任が大きく、プレッシャーを感じることもあります。でも、それだけやりがいがある役割だということ。攻撃の流れを生み出せるポジションであり、積極的な走塁を仕掛けて相手にプレッシャーをかけたいと思っています。

――意識していることはありますか?

迷わないことですね。0コンマ何秒の世界で争っているので、ちょっとでも迷うとリズムが狂ってしまう。ギリギリのところで勇気を持って判断できるよう、日々の練習から意識して取り組んでいます。

――ランナーコーチもメンバーの1人ということですね。

10人目のレギュラーといった意識で取り組んでいます。“ランナーの目”となって指示を送りたいんです。実際にプレーするわけではありませんが、攻撃のキーマンだと思っています。勝負を決める1点のために突き詰めていきたいです。

――夏に向けての抱負を教えてください。

強化合宿を行ってチームも個人も強くなれたと思います。ナツタイではとにかく一球一球やりきることが大事。そして最後は甲子園に行きたい。そのためにランナーコーチとしてはもちろん、チーム全体を盛り上げるために貢献していきたいと思います。

ランナーを無事ホームに生還させるため、勇気を持って腕を振る。

日立第一高校野球部

茨城県内屈指の進学率を誇る日立第一高校野球部の選手たち。
茨城県内屈指の進学率を誇る日立第一高校。選手たちは勉学と野球の両立に勤しむ。

●監督/中山顕
●部長/鈴木寛明
●部員数/3年生15人、2年生20人、1年生18人、マネージャー4人

1927年創立。1985年の夏に甲子園初出場を果たす。2007年よりスーパーサイエンスハイスクールに認定され、2012年からは中高一貫教育が開始された。学業と部活動、文武両道の精神で32年ぶりの甲子園出場を目指す。

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