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【至学館】グラウンドを持たない「東海王者」の練習内容と取り組み

2017.7.3

「東海王者」至学館の練習内容と取り組みを紹介

前篇でも紹介したが、至学館は練習環境に制約がある。グラウンドがなく、普段の部活は学校脇にあるテニスコートほどのスペースで行う。ゆえに工夫を凝らし、技術を磨く。

◆目 次◆

短いバット・長いバットでのティー打撃

綱渡り、ビジョン・トレーニング

心を整える「座禅」

少しのスペースも無駄にせず!

木村キャプテンミニインタビュー


グラウンドを持たない「東海王者」の練習内容と取り組み

短いバット・長いバットでのティー打撃

前篇では、センバツ初戦で見せた「振り出しゴー」による得点シーンを紹介した。打者がスイングを始めると同時に三塁走者がスタートを切る。打者は確実にゴロを転がし、得点につなげる作戦だ。

こうした作戦で「ゴロを転がす」と言っても、実際にゴロを転がすのは容易ではないが、至学館にはそのための練習法がある。80センチほどの短いバットを使ったティー打撃だ。

短いバットをフルに握ってのティー打撃。振る際はグリップをあまり前に出さず、捕手側の腰のあたりにとどめておく感覚でスイングするのがポイントだ。投球を引きつけ、弧の小さなスイングでボールの上を叩く。「単に『ゴロを転がせ』と指示するだけでは、意識しすぎてヘッドが下がり、逆に“ボールを切る”結果になってフライが上がってしまう。そうではなく、ゴロを転がすために基礎となる練習がある」と麻王監督は言う。

(※動画ではバドミントンの羽根(シャトル)をボール代わりに使用)。

その一方で、2ストライクまではフルスイングさせることも少なくない。鮮やかに振り抜くために、ノックバットのような細長いバットでティー打撃をする。ヘッドが走り、きれいに抜ける

「グラウンドがないから広々としたフリー打撃はできないが、長短2種類のバットによる極端な練習をすることで、十分に感覚を養うことができる」と指揮官は意図を説く。

綱渡り、ビジョン・トレーニング

綱渡り(スラックライン)とビジョン・トレーニングに取り組む選手たち

綱渡り(スラックライン)でバランスや股関節の柔軟性をアップさせる(写真左)。バッティング練習前には「ビジョン・トレーニング」で目を鍛える(同右)。

心を整える「座禅」

心を整えるために座禅に取り組む選手たち

練習や試合の前に、定期的に座禅を組む。「心の起伏が激しいと、野球でもスムーズな対応ができないもの。心が『無』でなければ」(麻王監督)。知人の住職の手ほどきのもと、部の草創期から習慣化してきた。2011年夏の愛知大会決勝戦では、試合中に雨天中断を挟んだが、その間もナインはロッカールームで座禅を組み心を整えた。「丹田」と呼ばれるへその下あたりに意識を集め、背筋を伸ばし、ゆっくりと鼻で呼吸する。

少しのスペースも無駄にせず!

練習場脇の通路でも素振りやティー打撃に励む選手たち

練習場脇の通路でも素振りやティー打撃に励む。少しのスペースも最大限に利用する。硬球は使えないが、バドミントンの羽根(シャトル)やテニスボールを用いている。このほか前篇でも触れたが、ケージ内での打ち込みでは常に試合局面を想定。バスターやバントなども磨きをかける。ピッチャー陣はブルペンで投げ込む際、マウンドとホームを結ぶ線を地面に引くことで、イメージを可視化して制球力を高める方法も実践している。

木村キャプテンミニインタビュー

木村 公紀主将(3年・遊撃手)
木村 公紀主将(3年・遊撃手)

「小学6年生のとき、甲子園で笑顔でプレーしている至学館を見て、僕もこの高校に入りたいと思いました。今のチームのスローガンは『凡事徹底』。野球だけでなく学校生活も含め、当たり前のことを当たり前に継続しています。チームの強みは思考力。一人一人が考える力をもち、各打席で『こうしよう』という思いがあります。春のセンバツでは力を出し切れない場面もあり初戦で負けてしまったので、夏は借りを返しにいきます」

(取材・撮影:尾関雄一朗)

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