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【ルーティンがキミを強くする】ルーティンはなぜ必要なのか?日本ハム選手教育ディレクターに聞く!

2017.6.5
北海道日本ハムファイターズで選手教育ディレクターとして生活を指導する本村幸雄氏

昨シーズン、10年ぶりとなる日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズ。選手育成に定評のあるチームの屋台骨を支え、若手選手が住む『勇翔寮』で選手教育ディレクターとして生活を指導するのが本村幸雄氏だ。
過去には高校野球で指導をした経験を持つ本村氏に、一流のプレーヤーになるために必要なルーティンについて伺った。


やりきることが大切
毎日の「生活」がカギとなる

ルーティンと一概に言っても、人によってさまざまなことを想像するでしょう。バッターボックスでの構え、投げる前の動作、普段の生活で行っていることなど。私が若手選手に指導しているルーティンは実にシンプル。必ず選手が「やりきれること」を設定することです。野球の技術や、仕草に関してルーティンを求めることはありません。

人間は毎日同じことを欠かさずに行うことで、自信と異なる「己の心を強くする」ことができるようになると私は考えています。また、毎日ルーティンを行うことで自分自身の状態をチェックすることができる。自分で決めた行動と向き合い、いつも同じ状態かどうかを確認することが大切なのです。一流の選手というのは、一日の行動の中で自分だけのルールや、こだわりをたくさん持っています。チェックする項目を作ることこそが一流への第一歩となるのです。

よくスポーツの世界で耳にする「心技体」という言葉。私はこれにプラスして「生活」がとても大事だと思っています。ですから、ファイターズのオリジナル野球日誌には、心技体に加えて生活という欄を設けています。項目ごとに、一日の良かった点や課題を書き込むことで選手は生活を見直すことになるのです。ルーティンの優先順位は人によって違いますが、挨拶や道具をしっかり片づける、朝の体操など、当たり前のことをきちんとやることは、プロ野球選手にとっても最も重要なことです。

北海道日本ハムファイターズの野球日誌
ファイターズの野球日誌には生活について書く欄が設けられている。

ルーティンを設定するうえで押さえておきたい3大ポイント

  • POINT1:選手がやれることを設定する。
  • POINT2:毎日やることを徹底する。
  • POINT3:全ての基盤となる「生活」を重要視する。

野球日誌は一生の財産になる
人間力を育み、一流の選手へ

私は選手教育ディレクターという肩書きですが、特別難しいことを行っているわけではありません。野球以外の生活を指導する、いわば選手たちの生活指導の先生みたいなものです。ファイターズは原則的に、高卒5年、大卒2年は寮に入らなければいけないので、その期間で野球の能力を一軍レベルに上げると同時に、一人前の社会人になるサポートを球団全体で行っていきます。

勇翔寮のミーティングルームにあるホワイトボード
勇翔寮のミーティングルームにあるホワイトボードには常にこの言葉が掲げられている。
本村選手教育ディレクター
選手の生活面を指導し、一人前の社会人になるように日々サポートしている本村選手教育ディレクター。

ただ、プロ野球選手の吸収力は、野球以外の部分も非常に早く、取り組む姿勢も素晴らしいものがあります。私も高校生を指導していたときは、球児によってどうしても理解する速度がバラバラで、遅れてしまうと途中で逃げ出してしまう球児に頭を悩ませました。ルーティンをやったことがない球児や苦手とする球児は、最初はプロ野球選手の真似をして、とりあえず野球日誌をつけてみるといいのではないでしょうか。継続できれば、必ず一生の財産になりますから。

野球に限らず、何かをやりきった人間と、中途半端に終わった人間では将来の道も開ける可能性が変わると思います。

野球の技術に関していえば、できないことを努力してできるようにすることは確かに大事です。けれど、できることをしっかりとやりきることも、人間力を育み、一流の選手になるための絶対条件ということを忘れないでください。

ファイターズ選手教育グッズ

球団オリジナル野球日誌

球団オリジナルの野球日誌
高校時代から野球日誌を書く習慣が身についていれば、プロ野球選手になっても取り組みやすい。


球団オリジナルの野球日誌は各項目に、その日の良かった点や課題を書き込める。本村氏は毎日各選手の日誌をチェックし、コメントをする。誰かが目を通し、読んでいるということが大切なのだ。
「選手にやらせっぱなしはダメ。指導者がちゃんと読み、必ずコメントをつけると選手たちの書く意識は高くなります。また、選手はけっして愚痴などは書かず、自分のプラスになることを書いた方がいいでしょう。一軍で活躍している西川遥輝はプラスのイメ―ジを作るのが上手く、想像力溢れる文章を書いていましたね」。

半年に1回の長期目標設定シート

長期目標設定シート
技術面を書く項目は、担当の技術コーチと相談して目標を細かく設定する。

年間で2回作成するシート。2回の振り分けはプロ野球開幕からオールスター戦が行われる前半戦で1回。次に後半戦からシーズン終了までで1回である。例えば投手であれば『5勝』と設定し、そのために毎日どんな取り組みをしていくかということを書き込んでいく。さらに、成功や失敗の分析を書く欄を設けることにより、選手自身に自覚させ、読み返させることで選手の成長に繋げる。
1年目の高山優希投手は、試合数・登板数を担当のコーチと相談して設定している。さらに目標を達成するために、スタミナ・技術などをどう向上させていくのかを詳細に書き込んでいる。

取材こぼれ話

大谷翔平選手は生活面も超一流

高校時代の大谷翔平選手が登場したTimely!16号
大谷選手の高校球児時代についてはTimely!16号でも紹介。高校時代からの積み重ねが今に生きている。


多くの才能溢れる選手を目にした本村氏だが日本を代表するプレーヤーである大谷選手の特徴について、“別格”という表現を使う。

「他と比べることができない別格な存在です。とにかく何事に対しても意識が高い。野球日誌もファイターズに入団する前から毎日細かく書いている。またタイムマネジメントがすごく上手いんです。決めたことは必ずやる。例え用事ができても、決められたスケジュールを崩すことはありません。だからこそ結果がついてくるのでしょう」。

(取材・文=児島由亮 写真=廣瀬久哉)

PROFILE

選手教育ディレクター 本村幸雄
1971年2月9日生まれ、大阪府出身。習志野高では甲子園に出場。日体大を卒業後、光明学園相模原の監督として、チームを神奈川大会ベスト8に4度導く。人間育成教育を指南する「教師塾」(原田隆史氏主催)で学んだ経験を生かし、明日のスターを育成している。

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