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【仙台高校】まずは公立No.1の座へ、その先に見据える甲子園

2017.5.22
夏の決勝戦でも使われるKoboパーク宮城で地区予選を戦った仙台高校野球部
夏の決勝戦でも使われるKoboパーク宮城。地区予選で2試合行い、実戦感覚は十分だ

まずは公立No.1の座へ、その先に見据える甲子園

◆目 次◆

高台にある文武両道の人気校

指示待ちでは力は出せない!

敗戦が引き上げた選手たちの向上心

まずは公立No.1の座を奪い返す

高台にある文武両道の人気校

宮城県仙台市立仙台高校。通称は「せんたか」、「せんこう」。丹野祐樹投手(元ヤクルト)を擁し、1998年夏に甲子園出場を果たした県内中堅校だ。仙台中心地から約6キロ、大学野球の名門・東北福祉大学にほど近い丘の上に、その校舎はある。

仙台高校野球部のグラウンドは他の部活と共用
グラウンドは他の部活と共用だ。切磋琢磨し合いながら、部活動同士の交流も深い

仙台市内を一望できる校内のグラウンドは、昨年新しい土を入れ替えたばかり。綺麗な褐色の土の上で野球部、サッカー部、ハンドボール部、陸上部などが明るい声を発しながら、活発に部活動を行っている。仙台駅から最寄の国見(くにみ)駅までは、JR仙山(せんざん)線でたった5駅(15分)。駅から徒歩約9分。部活動で帰りが遅くなっても保護者の送迎がいらない好立地ということもあり、仙台市内でも志望者数の多い学校として知られる。文武両道、自由な校風が伝統となっている。

指示待ちでは力は出せない!

「海も見えるし、眺めは最高ですよ。ここは交通の便がいいので、朝練も夜の自主練も選手が気兼ねなくできる。恵まれている土地だと思います」。石垣光朗監督(53)は、鋭い眼光を少し緩ませて選手たちを見つめた。就任4年目。当初は熱い指導スタイルを貫いてきたと言うが、今年は心機一転。選手たちの自主性を促して「やらせる」「見守る」という方針にシフトチェンジした。

きっかけは、昨秋の地区予選敗退。県内屈指の左腕・佐藤隼輔を含む夏のレギュラー6選手を擁して秋の東北大会出場を狙ったが、気持ちの弱さが出てしまい県大会出場すら果たせなかった。

「悩みました。結局、指示待ちの選手では力を出せないんですよね。正月の練習始めに選手たちに『どうする?』と聞きました。もともとこの代は真面目な選手が多く、キャプテンを中心に自分たちで考えられるチーム。怒らないと、厳しさがなくなるというリスクもありますが、口出ししたいことの半分をグッと我慢することにしました」。

仙台高校野球部を率いる石垣光朗監督
「時代に合わせて」と、今年から指導方針を一新した石垣光朗監督

主将の笹口大輝と、6班のパートリーダーが中心となり練習は「自ら動く」というやり方を徹底し、根本から立て直した。冬の間、選手たちは考え、自分から動くように。心の成長は次第にパフォーマンスへとつながり、この春は中部地区予選を突破した。予選準々決勝では仙台育英に0-2で敗れるも、佐藤が8回7安打9奪三振2失点の力投。センバツ出場の王者に7回までほぼ互角の試合を展開した。試合後、仙台育英・佐々木順一朗監督(57)が「全部ストライク先行で投げてきた。(宮城で)1番いい左ピッチャーじゃないですか」とコメントしたほどだ。佐藤は地区予選4試合2完封、30回2/3で35奪三振の快投で、秋に失った自信を取り戻すことに成功した。(佐藤隼輔投手の記事は後編で)

敗戦が引き上げた選手たちの向上心

しかし本命はあくまでも夏の選手権。そのための準備に甘えはない。取材当日(5月11日)は、5月20日から始まる春の県大会に向け、守備中心の練習を行った。A、Bチーム合同で2班に分かれ40分交替でシートノック、置きボール捕球、ステップ&スローに重点を置いた。内野手出身の石垣監督が身振りを交えて補習姿勢のアドバイスを送る光景はあるが、練習の流れは全て選手主動。空いたスペースで投手陣がランメニューを行い、野手陣は室内練習場で綱登りや、体幹トレを行った。

練習で何度もゴロ捕球を行う仙台高校野球部の選手たち
この日の練習は守備中心に行われた。何度もゴロ捕球を行う選手たち
守備力には自信を持っている仙台高校の選手たち
守備力には自信をもっており、Koboパーク宮城で行った仙台育成戦は失策ゼロ

18時過ぎに「卵かけごはん」の補食タイムで一息ついたら、30分間のスイング練習。バスターの構えを交えて実戦を想定した振りを行った。その後ダウンを終えて、選手間だけのミーティングを行い、20時ごろ練習が終了。さらにここから各自の自主トレーニングが始まり、室内練習場の灯りがすぐに消えることはなかった。仙台育英戦の敗戦が、選手たちの向上心を一つ上のステップへと押し上げた。

卵かけごはんで補食を行う選手たち
卵かけごはんで補食を行う選手たち。女子マネが炊いた炊きたてのご飯を約1合ずつ食べる
20時以降も自主練習に取り組む仙台高校野球部の選手たち20時に全体練習が終了するが、選手たちが自主的に足りない練習を行い、帰宅する

まずは公立No.1の座を奪い返す

笹口主将は言う。「野球だけじゃない、文武両道の道を歩みたくて仙高(せんたか)に来ました。広い視野で物ごとを考え、行動するのが公立高校野球部の良さだと思います。まずは、目の前の春の県大会優勝を狙います」。仙台東部シニアで主将も務めた笹口は、石垣監督が信頼する責任感の強いリーダー。甲子園出場の記憶は「僕が生まれる1年前のことなのでわかりませんが、ネットでみんな調べているので、知っています」と誇らしげだ。

宮城県の公立高校は実力伯仲。まずはこの春、公立NO.1の座を奪い、夏19年ぶりの甲子園へ、階段を一気に駆け上がる。

仙台高校野球部63人の部員
部員数は63人と、公立校では大所帯に属する。目標はもちろん「甲子園!」

(取材・写真/樫本ゆき)


◆仙台高校野球部

1941年創部。1998年夏の甲子園出場。部員数(女子マネ―ジャー)=3年22人(1人)、2年17人(1人)、1年21人(1人)。青柳啓介部長、阿部雅博副部長、石垣光朗監督。大場凌コーチ。スローガン=チームプライド「全員野球」、「愛されるチーム 絆~心を一つに~」。主なOB=太田敦士(元オリックス)、丹野祐樹(元ヤクルト)。部活動は女子ダンス部、フェンシング部などが有名。進学率100%。

◆監督PROFILE

石垣光朗(いしがき・みつろう)

1963年6月17日生まれ。宮城県仙台市出身。仙台三(高3夏ベスト4)から宮城教育大学。選手時代は三塁手、遊撃手。中学校教諭として8年、高校教諭として富谷、岩出山、多賀城などを指導し2013年仙台高に赴任。社会科教諭。O型。

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