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【奈良大附属】練習にきちんと取り組んだ3年生を中心に「二強」に迫る

2017.5.15
奈良大付属野球部を率いる田中一訓監督
奈良大附属野球部を率いる田中一訓監督

昨年の選抜で優勝を飾った智辯学園と春夏通算50回の甲子園出場回数を誇る天理。何十年もの間、並び立つ奈良の両雄に果敢に挑んでいるのが奈良大附属だ。秋の近畿大会には何度も出場し、夏も上位進出の常連で県内では誰もが知る有力校。悲願の甲子園初出場は2015年の選抜、初戦敗退だったこともあり田中一訓監督は「あっという間に過ぎ去った」と話すが、後に優勝を果たすことになる敦賀気比を相手にロースコアの試合を演じた。現チームも練習試合で履正社を、秋季大会では天理を破るなど力はある。入学時の実力では智辯学園や天理に及ばない選手が多いのが現実だが、どのようにして力をつけていくのだろうか。


「二強」へ行けなかった選手たちが力をつけ「二強」に挑む

現チームは117人の部員と3人のマネージャーがいて総勢120人。今年に限ったことではなく、例年各学年40人前後の選手がいるため部員数は毎年100人を超える。しかもグラウンドは他クラブと共有。ライト後方ではサッカー部が練習しており、さらに陸上部が使うトラックの位置とフリーバッティングでセンター付近を守る選手が重なっているため、野手の間を陸上部員が駆け抜けて行く。限られたスペースの中で大人数が練習するため、月曜日は3年生がオフ、火曜日は1年生がオフ、水曜日は2年生がオフと学年でオフを分け、奈良大学のグラウンドが使える木曜日は二手に分かれて練習を行う。全員での練習となる金曜日は、1年生は外周での素振りやランニングを中心としたトレーニングに励む。

他の部活とグラウンドを併用して練習を行う奈良大付属野球部の選手たち
グラウンドは他の部活との併用

奈良大附属に入学してくる選手は智辯学園や天理に行きたかったが、その希望が叶わなかったという選手が多い。飛び抜けた実力を持つスーパー1年生がいるわけではないので、例年3年生中心の構成となる。現チームもベンチ入りしている2年生は捕手の植村建太1人だけ。残り19個の背番号は全て3年生がつけている。高校できちんと取り組めば力はつく。

実は智辯学園や天理とレギュラークラスやベンチメンバーを比べた時、実績ほどの大差はつかない。田中監督が感じている2強とその他の有力校との間にある大きな違いは、核になる選手の能力差だ。好選手を揃える有力校と好選手の中にスター選手が3、4人いる強豪が戦うと、その差が結果となって表れる。2強の存在については「高い壁なんで、やりがいもあるんですけど、やられちゃうので。どちらかに勝ってもどちらかにやられちゃうのが現状なので。実力は全然違うので向こうを10点としたら僕らは6点か7点、ダメな時やったら5点というようなぐらいの戦力の差はあります。でも7:3ぐらいだったら勝負にはなるので、そこで力発揮させられるように」

個人能力で上回る相手に勝つために大事なことは、やはりバッテリーだという。昨夏の奈良大会準決勝・天理戦は、バッテリーの力で優位に立ち、スター選手の一発に泣くという、まさしくそんな試合だった。2連続完封でチームをベスト4に導いた左腕エース・谷口航也がこの日も好投。奈良大附属が序盤で先制に成功すると、その後は互いに0行進が続き、1-0で最終回を迎えていた。しかし9回裏、谷口は1死1塁から痛恨の逆転サヨナラ2ランを浴び、惜しくも敗戦。初の夏の甲子園出場はならなかった。

ピッチング練習を見守る奈良大付属野球部の田中一訓監督
ピッチング練習を見守る奈良大附属野球部の田中一訓監督

谷口も軟式出身で当時は線が細く、持ち球はストレートとカーブのみ。それでも強い向上心の持ち主で地道な体作りから始め、球威はもちろん特に制球力が上昇。変化球の種類も増え、3年生になる頃にはほとんど打たれない投手になっていた。

現チームもスライダーが武器のエース・木下隆也は昨年の谷口同様、制球力が向上してから失点が減った。さらに球威のある大西健太、サイドスローに転向した気持ちの強い矢野誠也がブルペンに控え、駒が揃う。夏の連戦でも不安は無い

自主練習が始まる頃には辺りは真っ暗
バッティング練習に取り組む奈良大附属野球部の選手たち

田中監督はバッティング練習などで技術指導はあまりしないが、人間性についてはミーティングで繰り返し話をする。「審判もこの子をもっと見たい、と思ったら際どいコースを見送った時、ボールって言ってしまうんでね。そういう雰囲気出せる選手になれっていつも言ってます。そのためにはやるべきことをきっちりやって、みんなから信頼してもらうことじゃないですかね」流れを引き寄せるプラスアルファのためには人間性も重要だ。

「学校の名前がスコアボードに載ったり、アルプススタンドで一般生徒や先生方が一体となってる姿を見たら、感動しますよね」

2年前の春に足を踏み入れた聖地についてそう話していた。この夏はその景色にさらに熱気を加えた最高の舞台を目指す。(取材・撮影:小中翔太)


監督プロフィール

田中一訓(たなかかずのり)
1973年8月15日生まれ。奈良県立五條高校からから大阪体育大学に進み、卒業後は郡山高校でコーチを6年間務め、2004年から奈良大附属のコーチ。2005年秋から指揮を執り、現在に至る。2015年の選抜で同校を初の甲子園出場に導いた。現役時代のポジションは捕手。

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