学校・チーム

【栃木工業】食トレのきっかけは練習するほどに痩せていく選手

2017.4.12

栃木工業野球部の選手たち

10年前から始めた食トレが今ではチームの伝統に

公立高校としては県内でも屈指の実力を誇る栃木工業。昨年春は作新学院を破り、県大会ベスト4にも進出している。その食トレについての歴史は古く、約10年前から専門家による指導を取り入れているという。春夏通じて初の甲子園へ向けて練習に励む栃木工業の食トレを取材した。


◆目 次◆

練習するほど痩せる選手が多いため食事に着目

生きるためではなく強くなるために食べる

「食トレ」選手の声

「食トレ」保護者の声

管理栄養士のお弁当チェック!

練習するほど痩せる選手が多いため食事に着目

夏の県大会6連覇、昨年夏の甲子園優勝と、ここ数年は作新学院が圧倒的な強さを誇っている栃木県の高校野球。ほかにも佐野日大、白鴎大足利、文星芸大附属など私立の強豪がしのぎを削っており、過去10年間で夏の甲子園に出場した公立高校はゼロである。そんな中で存在感を示している公立高校が栃木工業だ。08年の春には37年ぶりに関東大会に出場すると(県大会準優勝)、その年から3年連続で夏の大会でベスト8以上に進出(10年はベスト4)。昨年の春の県大会でも作新学院を破ってベスト4と、コンスタントに結果を残し続けているのだ。

実践的な練習に取り組む栃木工業野球部の選手たち
3月の練習試合解禁に向け、2月中旬から実戦的な練習を多く取り入れる。

チームを指導する日向野久男監督は同校のOBで社会人野球でもプレーした経験を持つ。90年の秋から13年間監督を務め、3年間チームを離れていたが06年から再び母校に復帰した。その日向野監督が食トレに取り組み始めたのは復帰翌年の07年からだという。

「最初に監督をやっていた時はとにかく厳しくやって追い込めばいいと思っていました。でも選手たちは練習をやればやるほど痩せていって力が出せないんですね。そうすると当然故障も増えてくる。そんなときに西武台千葉の皆川監督が専門家にお願いして食事指導をしているという話を聞いて、それがきっかけで始めてみました」。

栃木工業野球部のキャッチャー練習
捕手出身の日向野監督だけにキャッチャーへの指導が細かく、捕球、送球いずれも目指すレベルは高い。

最近は食トレに取り組む高校も珍しくないが、10年前はまだ専門家の指導を受けているチームは少なかったという。しかも栃木工業は公立高校で全員が自宅から通っている選手たちだ。保護者への負担も大きくなるが、そのあたりの苦労はなかったのだろうか。

「保護者の理解は意外なほどすぐ得られました。やっぱり身体が目に見えて大きくなりますし、翌年の春に県大会で準優勝してすぐに結果が出たというのも大きかったと思います。それからは痩せてしまうようなことはなくなって、練習の効果は格段に上がっています」。

生きるためではなく強くなるために食べる

すぐに結果が出たことで保護者の理解は得られたとのことだが、それを続けることはやはり簡単ではないはずだ。保護者から継続して協力を得るためにはきちんとした言葉でお願いをする必要があったという。そのために日向野監督は毎年必ず保護者に対して話すことがあるそうだ。

「親御さんにはまず、“野球部員は普通の高校生ではありません”ということを話します。一般の生徒とは消費するカロリーが全然違いますから。そして消費した分を補うだけでは足りません。当たり前のことですが、身体を大きくするためにはそれ以上を食べる必要があります。だから“生きるために食べるのではなく、強くなるために食べる”ということを選手にも保護者にもまず理解してもらうことが重要だと思います」。

栃木工業野球部のキャッチャー練習
昼食のお弁当は厳しい練習の合間の束の間の至福の時

そのような働きかけも奏功して、継続して保護者の協力も十分に得られているという。ただもちろんそれだけに甘えることなく、野球部としても普段の食事のフォローを行うことも心がけているそうだ。

「うちは全員が自宅から通っていますし、遠方の子は通学に2時間近くかかります。そういう選手は帰宅してから多く食べるのは大変ですから、部室でご飯を炊いておにぎりを持たせたりしています。平日も練習の合間に積極的に食べさせることも気をつけていますね」。

入学当初は朝食をとっていない選手もいるそうだが、先輩の姿を見て下級生も自然と取り組みが変わる。2年間もすると見違えるような身体になる選手が多く、体調を崩すことも少ないという。作新学院などの強豪私立を破って初の甲子園へ。“強くなるための食事”を合言葉に春以降も栃木工業の食トレは続く。

真剣な表情で日向野監督の話を聞く栃木工業野球部の選手たち
昼食前には午前中の練習を振り返り午後からの練習に対する細かな意識付けも行っていた。
栃木工業野球部・日向野久男監督
日向野久男 (ひがのひさお)
1961年生まれ。栃木県出身。栃木工業〜東京鉄道管理局(現JR東日本)。社会人野球で9年間プレーした後、90年に実習助手として栃木工業に赴任し秋から監督。

「食トレ」選手の声

栃木工業野球部捕手の田中山海くん(3年田中山海くん(3年/捕手)

「子どもの頃からずっとキャッチャーで、細かったわけではありません。ただ中学時代はあまり食べられなくて、高校に入学した頃は細かったので食べないといけないなと思いました。
トレーナーの方に教わるまでは砂糖も気にせずお菓子を食べて、炭酸飲料も飲んでいたので今思うと意識が低かったと感じています。
普段意識していることはご飯を多く食べることです。夏場は少し苦しいですけど、今の時期は比較的楽に食べられています。身体は急に大きくなったわけではなく、着々と伸びてきた感じですね。
プレーの面では高校に入った時は打球が全然飛ばなかったのですが、当時と比べて飛距離は格段に伸びていると思います」。

「食トレ」保護者の声

栃木工業野球部保護者会長の北條隆雄さん

食トレの影響で家族の食事バランスも改善が!

キャプテンの北條莉生くんのお父さんである保護者会長の隆雄さん。莉生くんのお兄さんも同じ栃木工業でプレーしていたということもあり、食トレに関してもすんなり理解できたそうだ。
「お兄ちゃんがいて慣れていたことが大きいと思います。莉生も身体は大きくなかったので自分で食トレの必要性は感じていたと思います。他の保護者も実際に大きくなっている選手を見て、積極的になった方が多いですね」。
実際に食事を作っているお母さんたちに話を聞いてみても準備は大変なものの、「家族の食事のバランスも良くなった」、「お弁当の感想を言い合うようになった」、「専門家の指導による気づきが多い」などプラスの意見が多かった。食トレは選手の身体作りだけでなく家族の健康にも貢献してくれるようだ。(保護者会長北條隆雄さん)

栃木工業野球部3年生のお母さん4人3年生のお母さん4人。食トレを始めて買い物も変わった。

管理栄養士のお弁当チェック!

管理栄養士が栃木工業や野球部のお弁当をチェック

ご飯とパスタのW炭水化物の組み合わせでスタミナたっぷり。ご飯のお供を何にするのかは、白米を多く食べる必要がある球児にとって大事な問題。その点ゆかりご飯は、さわやかな香りが食欲を増進してくれ、また、防腐作用も期待できます。パスタにアスパラを入れたり、かぼちゃコロッケにしたり、上手に緑黄色野菜を取り入れていますね。

栃木工業高等学校

所在地:栃木県栃木市岩出町129
学校創立:1962年
主な戦歴:2016年秋・栃木県大会2回戦、2016年夏・栃木県大会2回戦、2016年春・栃木県大会ベスト4