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【福岡工業】朝も昼も全員で食べる「食トレ」時間を確保

2017.4.6

福岡工業野球部の選手達

食トレで意識も向上。目指すはもちろん日本一

高校野球においても数多くの強豪、古豪、新興勢力がしのぎを削る福岡県内でも、屈指の伝統校として名高い福岡工業。度々上位に進出して存在v感を示している。すべてにおいて重要視しているのは意識。食事でも選手、指導者、保護者が一体となって意識高く取り組む姿勢があった。


◆目 次◆

昼食だけでなく朝食も全員で食べる時間を確保

食トレによって選手の意識レベルも向上

「食トレ」選手の声

「食トレ」保護者の声

管理栄養士のお弁当チェック!

昼食だけでなく朝食も全員で食べる時間を確保

福岡工業の創設は1896年。今年度で開校120周年を迎え、工業高校では西日本で最も歴史のある伝統校だ。野球部の歴史も古く、過去に春夏通算9度の甲子園出場を果たしている。近年は私立校の台頭もあって甲子園出場からは遠ざかっているものの、01年夏の県大会で準優勝、08年の春には現在DeNAの三嶋一輝選手と日本ハムの中島卓也選手を擁して九州大会優勝を果たすなど、県内でも指折りの実績を誇っている。

バッティング練習を行う福岡工業野球部の選手達
午前中はポジションに分かれての守備練習とバッティングが中心。グラウンドはサッカー部、ラグビー部と兼用のため全面が使える日は貴重だという。

チームを指揮する森山博志監督は三井、筑紫中央、福岡工業、糸島の監督を歴任し、13年に再び福岡工業の監督となったベテラン監督だ。先述した三嶋、中島の両選手は最初に福岡工業の監督を務めた時に指導した選手である。

監督が食事に力を入れ始めたのは11年前とのこと。とにかく選手の故障が多いのを改善しようとしたのがきっかけだったという。
「食トレに本格的に取り組むようになったのは平成16年だったと思います。細い選手が多くてみんなよくケガをする。まず身体を大きくしようと思って、とにかくおにぎりを食べさせるようにしました。今のように専門の方に来てもらうようになったのは、その後に赴任した糸島の時です。個別に指導してもらうとやっぱり効果は違いますし、平均すると入学してから10キロ以上は体重が増えるようになりました。試合の結果もついてきていましたので、福岡工業に戻ってからも専門家に来ていただいています」。

「おんぶ抱っこ」と呼ばれるトレーニングを行う福岡工業野球部の選手達
トレーニングメニューのひとつ通称「おんぶ抱っこ」。追い込む時期は砂浜でも行う。

福岡工業の食トレは朝から始まる。毎朝6時55分に集合し、全員で掃除をした後に2班に分かれて朝食とバッティング練習に取り組んでいるのだ。
「うちは全員が自宅から通っていることもあって、集合時間に間に合わせようとすると5時くらいに家を出ないと行けない子もいます。だったら朝もみんなで食べた方がいいだろうと思って、学校で食べるようにしました」。

食トレによって選手の意識レベルも向上

福岡工業の食事でもうひとつ特徴的なのが土・日曜の炊き出しだ。保護者が当番制で昼食を準備し、全員で同じメニューを食べる。献立はその日によって異なるが、ご飯は必ず1キロと決められている。取材当日もすきやき丼500グラムとは別にご飯500グラムが準備されていた。入学当初は食べるのに苦労する選手もいるが、先輩が食べている姿を見て自然と食べられるようになるそうだ。それにしても、炊き立ての温かいご飯を食べられるというのは選手にとってありがたいことである。

昼食を食べる福岡工業野球部の選手達
昼食を食べる福岡工業野球部の選手達

森山監督が指導する中で最も重要視していることが“意識”。常々「能力の差は2倍、努力の差は5倍、意識の差は100倍」ということを伝えている。そして食トレをすることが選手の意識の向上にも繋がっているという。

「身体が大きくなって打球が飛ぶようになる、ケガをしにくくなるといったことは当然あります。でもそれ以上に大きいことは選手の意識が変わることですね。自分の身体に対して強く関心を持つようになる。また食事を準備してくれる保護者に感謝するようになる。食トレのトレーナーも本当に細かいところまで指導してくださってますので、話をよく聞くようになるんですよ。冬の期間は体育理論やスポーツ生理学、スポーツ心理学などの勉強もしていますが、意識の高さがないと頭に入ってきませんから。実際の練習も同じだと思います」。

何事にも意識高く取り組むために野球部では『主体変容』という言葉を掲げている。これは経営の神様として知られる松下幸之助の言葉であり、周囲や環境を変えるにはまず自分が変わる必要があるという意味だ。食事によって身体を変えることもそのひとつと言えるのではないだろうか。

チームが目指すのはもちろん日本一。そのための食トレはこれからも続いていく。

福岡工業野球部を率いる森山博士監督
森山博志 (もりやまひろし)
1961年生まれ。福岡県出身。筑紫中央〜日本体育大。大学卒業後、三井、筑紫中央、福岡工業、糸島の監督を歴任し13年に再び福岡工業の監督に復帰した。

「食トレ」選手の声

食トレに励んでいる福岡慎太郎くん(3年/投手)と萩原大雅くん(3年/捕手)
食トレに励んでいる福岡慎太郎くん(3年/投手)と萩原大雅くん(3年/捕手)

福岡慎太郎くん(3年/投手)
「気をつけていることは間食におにぎりを食べることです。逆に砂糖や揚げ物は控えています。監督さんによく言われるフォームのバランスを意識するために以前はセットで投げていたのですが、最近はワインドアップでも崩れなくなって、スピードも140キロ近く出るようになりました。夏までに86キロまで体重を増やして、体脂肪率は15パーセントに減らすことが目標です」。

萩原大雅くん(3年/捕手)
「中学時代の先生も森山先生の指導をよく知っていて、当時からご飯はよく食べていたので体重はある方でした。でも高校でしっかり知識をつけて、より身体が大きくなったと思います。新チームになってからキャッチャーになりましたが、捕球も安定してきました。体脂肪率を落としながら体重を70キロにするのが目標で、今は代謝をよくするために水を1日2リットル飲むようにしています」。

「食トレ」保護者の声

福岡工業野球部選手のお母さん達
炊き出しを行う福岡工業野球部選手のお母さん達
選手をサポートするお母さんたち

当番で炊き出しを実施し温かいご飯を提供

土・日曜のお昼には当番制で炊き出しを実施するなど、保護者の支援体制が整っている福岡工業。入学した当初に行った栄養指導の説明会では「そこまでやらないといけないの?」という声も上がったそうだが、実際にやってみると良い面が多く見えてきたという。一つは子どもたちの意識レベルの向上だ。定期的に測定する体脂肪率や筋肉量のデータを持ち帰り、それを見せながらメニューのリクエストを出す選手も多いという。もうひとつは無理のない範囲でやるということ。全てを手作りでやるのではなく、加工品もうまく使っている。「チーズとオレンジジュースを常に冷蔵庫にストックしておくだけでだいぶ楽になる」という意見も聞かれた。うまく続けるための工夫をお母さん同士で共有し、お互いに感心しあう様子から保護者の意識の高さも感じられた。

管理栄養士のお弁当チェック!

管理栄養士が選手のお弁当をチェック

たんぱく質と炭水化物(肉とご飯)の組み合わせは、身体を大きくするためには良い組み合わせです。牛肉(赤身)には「鉄」が多く含まれているので、持久力もサポートしてくれます。ビタミンとカルシウムも摂りたいので、100%オレンジジュースや100%野菜ジュース、乳製品などもあると良いでしょう。

選手達のお弁当その1 選手達のお弁当その2
お母さんたちは炊き出し以外に朝食や補食作りに奮闘。食トレをサポートする。ご飯の量はもちろんだが、朝でも肉や卵などたんぱく質を多く摂取している選手が多いそうだ。

福岡工業高校

所在地:福岡県福岡市早良区荒江2-19-1
学校創立:1896年
主な戦歴:
2016年秋・福岡県大会2回戦
2016年夏・福岡県大会3回戦
2016年春・福岡県大会3回戦

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