企画

【瀬谷高校野球部監督・平野太一】グローバルスタンダードを知り、日本の野球との融合を考える(ドミニカ2日目:中篇)

2017.3.3

神奈川県立瀬谷高等学校硬式野球部監督・平野太一と申します。

この度、様々な想いや経緯があり、『ドミニカ共和国』に野球・文化を学びに行きました。その学びをぜひシェアしたいと考えていたところ、Timely!WEBさんにお声掛けいただき、このような掲載をさせていただく運びとなりました。よろしくお願いいたします。

軽やかな守備を見せるドミニカの選手達

◆目 次◆

内野手は、“いかに早く転送するか”がテーマ

“軽い”なのか、“軽やか”なのか

投手は最もセンスのない選手がやるポジション?!

何を当たり前だと感じるかで人生は変わる

ミーティングが終わり、動き始めた。
ウォーミングアップはコーチの指示するランニングやストレッチングをする、これは日本と大きく変わらない。
そこから各ポジションに分かれてのポジション別練習に移行。各ポジションともに担当コーチがおり、指導する形。

内野手は、“いかに早く転送するか”がテーマ

内野手はまずゴロ捕球から始まった。コーチがボールを手で正面に転がし、『捕球〜割り』動作をひたすら繰り返す。特徴としてはとにかく握り変えのハンドリングが速い!トレーニングの意図としても、『確実に捕ってもアウトにしなければ意味がない』という考え方で、とにかく早く転送するということが内野手はテーマであった。また日本の内野手よりも肘が低いサイドスローのような腕の使い方

握り変えのハンドリングが速いドミニカの選手達

なぜかと聞くと、逆に聞き返された。「なぜ上げる必要があるんだ?タイムロスだ。すぐ投げなければならないのだから捕ってすぐ引いて(横から)投げたほうが早いだろ?」そもそも肘が肩より上だの、下だのとは考えず、とにかくアウトにするための最善のプレーをシンプルに追い求めると感じた。

次は逆シングルの練習。これもハンドリングが柔らかく、速い!私の主観だが、日本人より逆シングルがうまい。うまいというより、“慣れている”という表現のほうが適切かもしれない。とにかく自然。日本だと逆シングルは基礎から外れた特別なプレーだと捉えがちかもしれない。日本で逆シングルを使うと「正面に入れ!」というように。

“軽い”なのか、“軽やか”なのか

次は手投げで方向ランダムのゴロ捕りをした後、最後は軽めのノック。1人1セット3球。正面1本、横1本、前1本の1セットがルーティンで、最後は必ず最後に前進のシングルキャッチからランニングスローを入れる。

これも日本だと「雑!」と言われるプレーだと思う。“軽い”と感じるプレーである。この“軽い”をどう捉えるかによって変わってくる。「野球を舐めていて、プレーへの想い入れが軽い」のか「動きが軽やかで軽快」なのか。日本だと前者の捉え方を間違いなくしがちで、私も自分の選手がそのようなプレーをしたらそう捉えると思う。
だが、『はじめから負けていいと思ってプレーする者などいない』ということを前提に考えると、少し見え方が変わってくる。

『際どい打球は、その選手が勝つために最善の判断をしてプレー(全身シングル、逆シングル、ランニングスロー)している』と捉えられる。

もちろん若い選手は勝つために間違った判断、選択をしたプレーもある。だが、それは経験がないからこそ。今のうちからは『自分の意志でチャレンジすること』を植え付けさせることが先決という考えのもと、もっとこうしろ、ああしろ、とは指導しない。

内野手の練習を見ているだけで容易に想像できた。失敗を経験して、でもまたチャレンジして成功する姿が。またその際、自由で幅の広いプレーの選択肢が彼らにはあり、日本では見られないようなスーパープレーをする姿が。

日本に戻り指導するときは、この経験を私はどう活かしていくんだろうと考えながら、この練習を目の当たりにしていた。

外野手はコーチがボールを手で投げ、背走キャッチの練習をひたすらする

意図が明確な外野守備練習

まずは1球ずつ。次にコーチが手に3球ボールを持ち、一緒に背走について行く。右後方、左後方、そしてさらに深いところへとボールを投げて、その球際を捕球する。笑ってしまうぐらいシンプルだが、とても効率的で明確な目的のある良い練習であった。

最後はスローイング。手投げのゴロ捕球からライト〜サードへのワンバウンドスローイングを繰り返して、外野手は終了。

投手は最もセンスのない選手がやるポジション?!

投手陣はキャッチボールからスタート。その際、硬式のソフトボールを使ってキャッチボールを行なっていた。握力やリリース、また重さの負荷をかけるという意味で日本でもよく見るトレーニングだが、ドミニカはさらに上をいく。ソフトボールに釘が何十本も打ち付けてあった(笑)。さらに重さの負荷をかける意味があるという。原始的だがそんなこと考えたこともなかった。

キャッチボールのあとは下半身トレーニング。外野フェンスにズラッと並んでもも上げやコサックダンスのようなトレーニングを繰り返す。それで終了。

投手がアカデミーに入るためには“いかに速いボールを投げるか”。とにかくそれに尽きるらしい。よって故障者は投手が一番多いようだ。

ちなみにドミニカでは1番うまい選手はショートを守り、どこも守れなかった、いわゆる使えない選手が投手をする。日本では投手はセンスがあり、何でもできるというイメージがあるが、極端に言えばドミニカでは投手が最もセンスがない選手がやるポジションということである。確かに鈍臭そうな選手が多かった印象だった。

何を当たり前だと感じるかで人生は変わる

1日目にはマイク・オズーナの話をしたが、この日もヤギの呪いを108年ぶりに解いたカブスのセットアッパー・ペドロ投手とSFジャイアンツのストッパー・カシーヤが遊びに来ていた。この地域出身らしい。

子どもたちと戯れる姿を見て、ドミニカの子どもたちはメジャーリーガーと身近に触れ合うことで目標や希望を見失わず、“なれる、できる”と自然と信じて生きているんだろうと思った。メジャーリーガーが身近にいて、話ができて、一緒に野球ができるのが当たり前。そんな当たり前が野球文化をさらに進化させているんだろう。

【次回はバッティング練習についてと、ドミニカの裾野の広さ事情について触れたいと思います。】


平野太一
1985.5.23(31歳)
大分県立別府鶴見丘高等学校 → 川崎医療福祉大学(中国地区大学野球連盟1部リーグ)
大学3年秋季1部リーグ戦にて首位打者(.471)、ベストナイン(三塁手)を獲得。
【監督歴】
神奈川県立津久井浜高等学校 → 神奈川県立瀬谷高等学校