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【多治見】強豪ひしめく岐阜大会を制した公立の普通科進学校(前篇)

2017.1.23

センバツ甲子園の出場校が27日に発表される。21世紀枠の候補校として吉報を待つのが多治見(岐阜)だ。昨年の秋、公立の普通科進学校として39年ぶり(春夏も含めると35年ぶり)に県の頂点に立った多治見は、限られた環境のもと工夫して練習に取り組んでいる。


練習環境の制約をはねのけ岐阜の頂点へ

昨年の秋、多治見は秋季岐阜県大会で優勝。公立の普通科進学校としては県で39年ぶりとなる偉業だった。県岐阜商や大垣日大、中京などの強豪校が大会中盤までに姿を消す中、多治見の粘りは際立っていた。初戦からの3試合を全て3点差以内のロースコアで凌ぎ、準決勝では9回裏に4点ビハインドをひっくり返すミラクル劇。東海大会では2回戦(準々決勝)で至学館(愛知)に1-2で敗れたが、この大会で至学館は準優勝してセンバツ出場を当確としているから、多治見も大健闘である。

普通科進学校の多治見は、練習環境の制約が大きい。平日は午後4時から練習を始めるが、6時半の完全下校を守るため、6時過ぎには片づけに入る。しかも月曜と木曜は7時限目まで授業があるから、部活動は1時間繰り下がって5時スタート。実質1時間ほどしか全体で取り組むことができない。グラウンドは他の部と共用。外野に相当するエリアにはサッカー部などのフィールドがあり、活動が重なれば、野球部の練習内容はかなり制限される。

練習を工夫し地味でもコツコツ継続

しかし、限られた環境のもとで工夫し、実力をつけてきた。グラウンドの都合で硬球での打撃練習がなかなかできない分、テニスボールやバドミントンの羽根(シャトル)を用いて打撃練習をしている<※後篇で詳しく紹介>。「工夫して融通をきかせることが大事。それに、打撃で重要なのはまず形を覚えること。打者はつい『飛ばしたい』という思いが先行しがちで、そういうバッティングや練習をやりたがるけれど、ウチにはそういう環境がない。施設がないことを逆に利用しています」(高木裕一監督)。

多治見高校・高木監督
▼高木裕一監督
1962年生まれ。岐阜県土岐市出身。東海大相模高校(神奈川)に野球留学し、外野手として長谷川国利(元大洋)らとプレー。東海大では準硬式野球部などで活動。就職で多治見市役所に入庁し、勤務のかたわら19年間、外部監督として多治見高校野球部を指揮してきた。

地味な打撃練習が実を結んだ。昨年の秋、県大会決勝で相手のアンダースロー投手を攻略。普段、不規則に変化するシャトルを打ち込んでいたから、軟投派投手の緩い変化球に惑わされなかった。「めぐり合わせがよかった。球速140キロのピッチャーだったら、打てていただろうか」と指揮官は謙遜気味かつ厳しく自己分析するが、「今日や明日ですぐにはできなくても、コツコツやればできるもの。だまされたと思って続けていれば、コツをつかんで花開くときがくる。冬が明ければ、打球も飛ぶようになっている」と説く。

年々レベルアップしてきたチームの基礎部分

高木監督は平日、多治見市役所に勤務している。19年前に依頼を受けて以降、ボランティアの形で野球部を指導してきた。「全体練習がなかなかできない分、一人ひとりに細かく教えています。鬱陶しがられるかもしれませんが、小学生に教えるような感じの個人レッスンを続けます」。自身は現役時代、東海大相模(神奈川)に野球留学した。就職で地元に戻り、多治見の監督に就任。しばらくして原貢氏(故人・元東海大ほか監督)と再会した際、「高校野球は選手を信じることが大切」という言葉を授かり、胸に刻んでいる。

多治見の躍進は今回が初めてではない。2004年のセンバツでも21世紀枠の県推薦校に選ばれ、2010年夏には岐阜大会でベスト4に食い込んだ。高木監督いわく「チームの基礎となる部分のレベルが少しずつ上がってきている」。練習試合の相手は、他校首脳陣が羨むほどの強豪校揃い。高木監督の母校・東海大系列の野球部や、中部地区の強豪私学と対戦を重ね、チームは敗戦から学ぶ。高木監督は「毎年優勝を目指しているが、まさかこのチームで優勝できるとは」と言うが、県で頂点に立つだけの素地が部にはあった。

高木監督の母校・東海大相模を思わせる多治見のロゴ
高木監督の母校・東海大相模を思わせる多治見のロゴ

21世紀枠でのセンバツ甲子園選出を待つ。しかし選手も監督も落ち着いている。「甲子園には出たいですが、最終の目標は夏の大会なので、途中にセンバツがあるかないか。私学の選手たちに力負けしないよう、パワーアップを図っていかなければいけません」(2年・河地京太投手)。一方で、地元からの期待は大きく「地域の人から『頑張っているね』と声を掛けられることもあります」(同・佐藤昂気主将)。夏は「日本一暑い街」の一つとして知られる多治見市だが、実力を秘めたナインが今年、多治見市の冬をもジワジワ熱くしている。

多治見高校の岡井君、佐藤君、河地君
左から岡井君、佐藤君、河地君

(取材・文・写真:尾関雄一朗)